私が担当した横領事件ですが、入社したときに横領した部長は逃げて
2年ほどたっていたでしょうか。
すでに警察へ告訴していましたが、まったく事件への対応ができてい
ませんでした。
のちにわかったことですが、警察が事件を受理しておらず捜査は進ん
でいませんでした。
顧問弁護士が担当していたようですが、このあたりの経過は私には理
解できません。
再度、告訴状を出し事件として受理してもらいました。
担当してもらった刑事さんも非常によい人でした。
私は、経営者に告訴の取り下げはしないかどうかの確認をとり、取り
下げはないというので、はじめて捜査のための資料収集をはじめまし
た。
会社側では、偽製番へ投入した部品(半導体)購入の事実は伝票等で
十分そろいました。
この手の事件の問題は、横領した当事者が会社から部品を盗み出し、
換金するために持ち込む買取店の確認、さらに買取店で得た現金が横
領当事者の預金口座などへ入金されているという事実があるかどうか
のようです。
結論から言えば、換金された現金が、当日、あるいは近い日に横領者
が開設した銀行口座へ入金された事実がでてきませんでした。
暗礁に乗り上げました。
日本の警察は本当に優秀です。
会社で把握できない事実関係を克明に捜査しておられました。
さらに、捜査を進めていくうちに、ある買取店で500万円の小切手が
振り出され、横領者の銀行口座へ持ち込まれていました。
事件が立証できた瞬間です。
捜査着手からすでに2年近くが経過したでしょうか。
その後、立件され、横領者は初犯でしたが犯罪事実と逃亡など悪質だ
として実刑が確定しました。
このように書くと簡単ですが、横領や詐欺などの事件は、事実関係が
つながらなくては立証できません。
詐欺をやる連中は、悪い意味で有能です。
このような事実関係が発覚しない仕組みを作っておこなっていますの
で、まず詐欺にひっかからないようにすることです。
警察が全力でやってくれても、立証できる事実がなければ、立件でき
ません。
まして立件できたとしても騙されたお金が返ってくることも少ないで
しょう。
企業であれ、個人であれ、捜査に使われる費用はすべて税金です。
このことを考えれば、企業において経営管理体制を構築することは当
たり前なのです。
個人では、これだけメディアなどで啓蒙しているのですから、自分の
立ち位置を明確にしておかなければなりません。
また、一人の被害者がでることで、さらに次の被害者がでるという自
覚が必要です。
毎日、詐欺や横領などの事件が続きますが、企業でも個人でも被害に
合わないための努力をしているかどうかが問われているのです。