ソニー子会社へ入社して思ったことは、この企業体(ソニー)
は、意識的に社員が意思決定できるような自由な体制を構築
していたのか、ということです。結論からすれば、東京通信
工業時代からの社内体制を踏襲しているだけで、とくに変わ
っことをやっているわけではないようです。
経営者(社長)は、お前は他の会社を知っているが、俺は、
東京通信工業時代から教わったようにやっているだけだ、と。
私がしきりにこの会社(ソニー)は変わった会社ですね、と
いうものだから、このような回答になったようです。
松下電器(パナソニック)や京セラなどのように、経営者が
語る経営理念などをもっている企業では、時代の変化ととも
に社内体制や企業活動を硬直させるのではないか、と私には
映ります。このような創業経営者の言葉をソニー内部で聞く
ことはありませんでした。常に、社員は自然体。自由闊達な
のです。むりやりやっていないので、仕事に楽しさができま
す。
もっとも、仕事自体は経験したことがないくらい厳しいので
すが、上司や先輩、社長には温かさがあります。だからこそ、
私のようなよそ者、バカ者が自由に仕事ができたのです。企
業が成長していく原動力は、やはり社員です。社員が時代に
対応した製品やサービスを生み出します。むしろ社是や経営
理念などで社員を縛ると、企業の成長を削ぐことにもなりか
ねません。柔らかな社内体制のなかで社員が、無意識で自由
にやることができることこそ、その企業の真の強さかもわか
りません。