ソニー的なマネジメントは、中小企業ほど活用しやすい、と
私は考えています。とくに社員数が50名前後の企業にお勧
めでしょうか。理由は、企業が成長していく余力が十分にあ
り、社員間のコミュニケーションがとりやすいからです。多
くの企業の経営者は、社員への権限移譲や予算管理を任せる
ことを嫌がります。権限を移譲すれば、経営の根幹(権力な
ど)をゆるがされると考えているようです。自らが常に社員
を含めた経営全般を掌握したい、と考える経営者が大半だっ
たでしょうか。
他方、企業が成長していくためには、現場サイドへ権限を移
していかなければ、長期的には企業の成長はむずかしくなり
ます。私がみてきた範囲では、企業規模が拡大してから、株
式公開などを目指し、管理会計の導入と同時に権限移譲をお
こなおうとしますが、それまで権限移譲されていない社員が、
急に権限移譲されてもなにもできません。現場は、混乱状態
でした。
経営者は、創業時から将来を考えた体制づくりを検討してお
くことが必要です。もっとも、なかには、経営者自身が自分
にはたいした能力がないと、現場に権限を移譲している企業
がありますが、極めて稀なことです。
やはり一般的な人間は、なにごとにも訓練が必要です。社員
へ権限移譲すると同時に、経営の管理体制を構築していく作
業があります。野放図な権限移譲ではありません。しっかり
と経営上の統制をする仕組みを検討しなければなりませんが、
小さな企業のうちから仕組みを積み上げておくことが、将来、
企業の成長と拡大に寄与します。経営とは、あくまで長丁場
です。
創業者が活躍できる時代は、せいぜい50年ほどでしょう。