企業では、内部統制や内部けん制という仕組みをつくって業
務が適正に運営されるようにしています。不正で発生する金
額が大きなる場合、多くは管理職や役員が絡んでいます。理
由は、相応な職務権限を有しているからです。
楽天モバイルの携帯電話基地局整備事業をめぐり同社に約3
00億円を不正に支払わせたとされる詐欺事件は、職務権限
を有する者が当初から不正請求をおこなう意図をもって仕事
をしていた、と推測されます。このような犯罪をおこなう場
合、キックバックさせるために必ず中小企業のオーナー経営
者や個人事業主の存在が必要です。理由は、キックバックす
るお金に使途がないことです。いわば社長の一声でお金を動
かせることが前提になります。
大手企業が取引する場合、相応の信用調査をしますし、ある
いは上場会社といった内部統制がおこなわれれていると推定
できる会社となります。今回のケースおいても楽天は、日本
ロジステックに業務を委託していました。当然、日本ロジス
テックでは水増請求はできてもお金を戻すことができません。
ここが一番の肝でしょうか。
犯罪をする者が社内の管理職や役員など、職務権限が広範囲
に及ぶ場合、不正をみつけるのは厄介です。とくに楽天モバ
イルのように急速な立ち上げをおこなうときなど、必要な人
材を外部に求め、しかも社内に経験が蓄積されていませんか
ら不正を発見することは非常に難しくなります。
楽天では、今回の不正を経験に合理的な内部統制をおこなう
仕組みを構築するのでしょうが、今度は、過度に内部けん制
などが複雑な仕組みとなり、事業展開が遅くなるという課題
を背負うことになるのではないでしょうか。この手の犯罪は、
相当あると思われますが、一般的には、金額がこれほど莫大
なものではないため見逃されているケースが多いのかもわか
りません。
いずれにしても大胆不敵な犯罪であり、実刑も相当重たいも
のになると、私は考えています。