労働基準法の適用条件は、そもそも労働者を使用しながら事
業を行う者とされています。つまり、労働者を一人でも使用
している事業者は労働基準法の対象となります。
なお、同居の親族のみを使用する場合や、家事使用人のみを
使用する場合、あるいは国外の事業場で働く労働者を使用す
る場合は労働基準法の対象外です。
対象となる労働者は、国内で事業者に労働者として雇われて
いる者であれば、企業の業種や規模を問わず、また、正社員
や契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、嘱託社員など
の雇用形態を問わず、すべての労働者が対象となります。
労働基準法に違反すれば、懲役刑や罰金刑などの罰則が科せ
られる可能性があります。
労働基準法の特徴のひとつに、「両罰規定」があります。
企業に勤める社員が違反行為をした場合、その社員が所属す
る企業の使用者が同様に責任を負うことです。
実務で問題となるケースは、課長や部長が労働基準法違反を
おこなっている場合ですが、単独で課長や部長が独自に違反
をおこなう、とくに大企業など社員数が多い場合など企業が
積極的に適法経営を目指している中で発生することがありま
す。このような場合、企業側は必ず疎明をします。
課長や部長に問題があれば、社内的な処分をおこなうことに
なります。もちろん、当該課長や部長は、労働基準法違反で
可罰される可能性がありますが、社内体制で未然に防止する
ことが普通でしょう。
問題は中小企業です。この場合、経営者が積極的に労働基準
法違反にかかわっていることが多く、課長や部長にかかわら
ず業務の責任者等が労働基準法違反をおこなえば、両罰規定
に基づき経営者(使用者)と責任者が処罰されることになり
ます。
多くは社員から労働基準監督署への訴え、あるいは労働基準
監督署の調査から発覚することが大半でしょうか。違反があ
れば、先ず是正勧告がなされます。そのうえで是正勧告従わ
なければ送検、起訴されることになります。中小企業ほど、
是正勧告を無視することが多いようですが、的確な対応をし
ておかなければ摘発されることになります。
大手企業では、人事部門などが専門的な対応を日常的におこ
なっていますが、中小企業では、このような担当者がいない
場合が多く、中小企業ほど労働専門弁護士と日常的に労務管
理に関するアドバイスをもらっておく必要があります。
その前提は、なんといっても適法経営です。その前提がなけ
れば弁護士は相手をしません。
企業を拡大したい中小企業の経営者ほど適法経営の覚悟が必
要でしょうか。企業を成長させていく創業経営者は、税務署
や労働基準監督署の指摘に真摯に向き合う姿が印象的でした。