労働災害を防止するためには、労働者の行動の規制と安全の
遵守がなければ成り立ちません。そのため安衛法でも、労働
者の措置順守義務を定めています。これに違反したときは
「50万円以下の罰金に処する」と、労働者の違反行為にも
罰則を科すことによって、労働者に安全遵守を強制していま
す。
安衛法第26条の規定は、事業者側の安全管理措置を先行さ
せ、それに対する労働者の対応義務として定めています。
しかし、現実問題としては、使用者の先行措置の有無にかか
わらず、職場や現場においては、労働者が当然遵守しなけれ
ばならない安全上の労働者自身の注意義務があります。
この労働者の自己安全義務については、判例上も、「労働者
はその労務提供の段階において誠実にその債務を履行するこ
とは勿論であるが、自らの安全を確保するため安全管理の諸
規定を遵守することも当然の義務というべきであり、」とさ
れています。
(昭和52.10.22名古屋地裁判決、名古屋埠頭事件)
健康管理義務は、安全管理の場合とちがって労働者自身の内
面的な健康上の障害を中心とするものです。また、労働者本
人の疾患、疾病というものとも密接な関係があり、労働者の
健康は、労働者自らのものです。当然、体の不調、自覚症状
などの疾病の状態が生じた場合は、自ら医師の診断を求め積
極的に治療すべきとされています。
このことは、自己自身の義務などという以前の自己の健康保
持義務 に基づく当然必要な行為です。
私たちの時代には男性に多かったのですが、お酒を飲みすぎ
て心身ともに正常な状態(完全履行)でなければ、企業は就
業拒否も可能というこです。
日本的で家族的な企業社会では、このような状態でも就業さ
せていたことが多かったと思いますが、私も大いに反省すべ
点がありましたが、もし業務上の事故で、社員本人の責めに
帰すべき事由があれば、相応な責任が発生することを自覚し
ておかなければなりません。
もっとも、企業側の安全配慮義務は、年々厳しくなっており、
企業として法的に対応することは当然ですが、法制度以上に、
自社の社員が健康で安全に働ける環境づくりを推進すること
は義務以前の課題なのかもわかりません。
労働災害が多い企業では、企業の存立基盤を揺るがすことに
なりかねません。社員は、企業で働く以上、自分自身の健康
管理は自分できちんとおこなえることがベースとなります。
企業において、どんなに適法な安全管理がなされていても社
員本人の自覚の欠如によって、事故が発生することがありま
す。企業と社員がいっしょになって普段から安全管理意識に
基づいた行動がいかに大切か、ということに尽きるのではな
いでしょうか。