中小企業では、時間外労働(残業)に関して固定残業制を導
入しているところを結構みかけます。固定残業制自体は、な
んら違法ではありませんが、時間外労働における賃金が労基
法所定の計算結果を下回った場合には清算が必要です。
先ず、日々の時間外労働に関する労働時間を確定させておく
ことが重要ですが、ここが案外ルーズな企業が多い、と思わ
れます。固定残業制の要件は、それなりに厳しいものがあり
ますから、導入要件を確認したうえで実施することが求めら
れます。
労働基準法は、原則労働時間を管理することが前提となって
おり、労働時間が把握できなければ、パソコンなどの使用状
況から労働時間を算定される場合があります。労働時間の把
握方法は、労働安全衛生法に則った方法で労働時間管理をす
ることが求められています。
労働時間の把握方法は、具体的には、使用者が、その場で労
働日ごとの始業時間と従業時間を確認・記録すること、ある
いはタイムカードやICカードなどの客観的な記録をもとに確
認・記録し、これらの記録に関する資料は3年間保存するこ
とが義務付けられています。
労働安全衛生法が2019年4月に改正されたことによって、
労働時間の客観的な把握をしておく必要があり、義務化され
ています。
労働基準監督署の臨検等で適正な労働時間が把握されていな
いと固定残業制そのものが運用できないことになります。
毎月、労働時間を把握し、社員個別の固定残業代の清算が必
要かどうかを確認しなければなりません。
時間外労働は業務命令によるものですから、会社側(管理職)
の指示、命令により発生するものです。一部の企業では、社
員が残業をするかどうかを決めているようなところがありま
すが、本末転倒です。しっかりと管理している企業では、先
ず、時間外労働申請書を提出し、責任者が許可することで時
間外労働が可能となります。すべてワークフローなどのシス
テムを導入していますので、手続き(申請、承認)と清算を
自動化し、一括処理します。
固定残業制度を運用している企業が、どこまで労働基準法に
基づき運用しているかは課題があるところでしょうか。とに
かく中小企業では、あらゆるものを端折って対応している感
じが否めません。いわゆる法制度を自分なりにいいとこ取り
したり、つまみ食いしてるようなものでしょうか。
出たとこ勝負の企業はそれでよいのでしょうが、将来、企業
を成長、拡大させていこうと考えている経営者は、はやいタ
イミングで着実に事業の骨格を作っておくことをお勧めしま
す。企業が成長してから対応しようとすれば、すべての対応
がコスト増として自社の経営に降り注ぎ、それだけで倒産の
可能性もでてくるでしょう。
成長、拡大する企業は、どこかで越えていかなければならな
い坂があるものではないでしょうか。
資料:J-Net21
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