数年前、地面師による詐欺の手口で大手不動産会社が50
億円以上をだまし取られる事件がありました。組織的な犯
行ですが、大手企業をも手玉に取るという点でプロの仕業
なのでしょう。
私が在籍していた企業が取引をしていた企業、もともと大
手企業で部長をされていた方が創業していましたが、業績
悪化に伴い資金繰りが厳しくなっていたようです。私が在
籍しいた経営者のところにも相談にきていたようですし、
経営者もできる限りの支援をしていたようです。
その後、会社が受け取っていた手形を大手都市銀行で交換
し、数億円を現金化したので資金繰りが一息ついたという
ことでした。そんなある日、どうもその手形が偽造された
もので詐欺事件になっているという報告が経営者からあり
ました。
企業の資金繰りに困っているところへ融資の話をもちかけ
て融資したうえで会社を乗っ取り(会社の実印などを勝手
に利用し)、偽造した手形を使い現金をだまし取る手口で
した。やはり大掛かりな組織犯罪でした。現金は、当時発
見されませんでしたので、組織的に役割分担された犯罪の
ようです。
株主総会などでお世話になっている警察関係者へ尋ねても
捜査関係の情報は教えられないと断られましたが、ある新
聞記事を読んでみたらと、言われました。該当する新聞を
読むため国会図書館へいってマイクロフィルムを貸し出し
てもらい読んでみると、過去にも同様の犯罪をおこなって
いました。
地面師同様、世の中には大掛かりな犯罪をおこなう組織が
あるようです。経営者にとって資金繰りは生命線ですが、
なんといっても素性が知れない人物からの融資は受けない
ことです。破産も嫌でしょうが、組織犯罪に加担すれば、
経営者自身が犯罪者として処罰されます。このケースでは、
経営者が知らないうちに実行されていたようで、経営者本
人は執行猶予になりましたが、それでも普通の人間にとっ
ては、一生悔やまれる結果でしょう。
世の中には、私たちが知らない世界があることを理解して
おくことが必要です。
もっとも、東京商工リサーチの『2019年「手形・でんさい」
動向調査』によれば、2019年の全国の手形交換高は183兆9,
808億円で、ピークの1990年(4,797兆2,906億円)から96.1
%も減少しました。2017年から3年連続の大幅減少であり、
1966年(164兆6,702億円)以来、53年ぶりの低水準となっ
ているようです。
手形取引も電子化が進められているようですから、この手
の犯罪がおこなわれる頻度は従来より低くなるでしょう。
それでも新な手口の経済犯罪が起こる可能性があり、経営
者は融資などで会社を乗っ取られることがないように細心
の注意を払って経営していくべきです。