東京証券取引所は、2022年4月の市場区分見直しで、プライ
ム市場は3つの区分のうち最も上場基準が厳しく、高い流動
性やガバナンスが求められる市場となっています。他方、旧
東証1部から横滑りでプライム市場入りした企業のうち、296
社が時価総額や流動性などの上場維持基準を下回っていまし
た。そこで東京証券取引所は経過措置を設け、改善計画の策
定を条件にプライム市場への移行を許可していましたが、東
証は2023年1月の上場規則改正時、背伸び組に「2択」を迫っ
ていました。3月期決算企業の場合、2026年3月末時点で上
場維持基準に適合しなければ、上場廃止予備軍である「監理
銘柄」に指定され、最短で同年9月にも上場廃止となります。
その場合、スタンダード市場に移るには、一度上場廃止して
から再度審査を受ける必要があります。その代わりの選択肢
として、東証はプライム市場の上場維持を断念した企業には
「特例」を設け、2023年4月から9月末の間であれば、申請書
の提出だけでスタンダード市場に移ることが可能としていま
した。
いよいよその特例ラッシュがきているようです。もともと上
げ底でプライムにいるわけですから、プライム市場の要件で
ある「流通株式時価総額100億円」を満たしていないのであ
ば、当然の帰結とも言えます。時価総額が上昇しないという
ことは、業績を上げられない、いわば実力不足企業というこ
とです。以前に書きましたが、経営上の課題が多いのもスタ
ンダード市場ですが、プライムに比べ、時価総額や売買代金
などの規模が小さい。また、有価証券報告書などの英文開示
を強く求められてはおらず、上場コストは安いとされていま
す。今後も基準との乖離が大きい企業がスタンダードを選択
すると考えられますが、市場区分にかかわらず上場企業とし
て相応の経営成果が出せるようにするための経営戦略の優劣
もまた厳しさを増すのではないでしょうか。