社員数が多くなると、いろいろな処分を検討する場面がでて
くるものです。処分の一つとして「出勤停止」があります。
出勤停止とは、懲戒処分の一つとして、一定期間、就業を禁
止するものです。
懲戒処分の一つであるため、有効に出勤停止を命じるために
は、①就業規則上、懲戒処分の種類として出勤停止が規定さ
れていること、②就業規則上の懲戒事由に該当する行為が認
められること、③対象となる行為に対して出勤停止処分を行
うことが相当であること、④弁明の機会の付与等の手続きが
適切に行われていること等が要求されます。
他方、自宅待機がありますが、出勤停止とどこが違うのでし
ょうか。出勤停止と混同されやすいのが、「自宅待機」です。
自宅待機命令は、出勤停止のように懲戒処分として行われる
ものではなく、業務命令として行うものとなります。そのた
め、就業規則上に、「懲戒処分を検討するに当たって、会社
は対象となる従業員に対し自宅待機を命じることができる」
というような根拠規定がない場合であっても、自宅待機を命
じる業務上の必要性があり、かつ、嫌がらせ等の不当な動機
・目的等がないならば、使用者は自宅待機を命じることが可
能です。
出勤停止と自宅待機命令の違いは、懲戒処分であるか否かと
いう点のほか、対象期間中の賃金の支払いの有無という点に
もあります。出勤停止処分の場合、対象期間中は無給とする
のが通常です。一方、自宅待機命令中は、賃金の支払いが必
要となります。これは、民法536条2項前段において、「債権
者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができ
なくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことが
できない」と規定されていることが根拠となっています。
上記内容は、人事・労務トラブルゾーン70より記載。
大手企業においては、適正な手続きを踏んで対応しています
が、中小企業では、経営者の鶴の一声でなにごも決定すると
いう悪習がかなりあるものです。やはり、社員に問題があれ
ば就業規則に基づき手続きを踏んだ対応が必要となります。
このような適正な対応をしていない経営者ほど労務問題を発
生させ、経営自体が窮地に立たされているようです。
経営とは、総合力です。なにも経営者が一人で背負うことは
ありません。そのために専門家を上手に活用している経営者
ほど企業を成長させ、好業績をたたき出しています。