転職すると、先ず人が嫌がる仕事、あるいは人がやり残した
仕事がまわってきます。あいつにやらせとけ、てなところで
しょうか。営業時代のように人を相手にした交渉ごとは大変
ですが、事務部門における面倒な仕事は人が相手ではありま
せんから、営業の仕事に比べればたいしたことはありません。
ソニーの子会社へ転職し総務の仕事をやりはじめたころ、上
司からリース契約を調べておけ、と指示がありました。最初、
わけもわからず調べていましたが、だんだんと理解できるよ
うになると、契約件数が約1300件ほどあるではないです
か。これはリース物件と契約書を一致させる作業が必要だ、
と。できたばかりの企業ですから、旧企業時代に契約した物
件がメインであり、相当てこずることになりました。もっと
も、このくらいではへこたれません。これは現場とコミュニ
ケーションとるにはちょうど良い材料だ、と常に前向き。
他の仕事もやっていますから、空き時間をみつけながら少し
づつ情報収集を続けていきましたが、案の定、現場とのつな
がりができ、他の仕事でも簡単に意思疎通が図れるようにな
りました。それでも、物件と契約書を一致させるには3年ほ
どかかったでしょうか。そんな私の姿をみかねたのか、経理
の部長から固定資産と同じように物の管理と契約、それから
支払をデータベース化しよう、と提案してくれました。私が
Excelで作成していたデータをもとに専用のシステムを開発し
てもらうことができました。総務部は、契約管理と物の管理、
経理部は支払管理を自動化することができました。
現在、リース取引はリース会計によってリース資産として計
上しなければなりませんので、ほぼ固定資産と同様に会計シ
ステムで処理しますが、私が在籍していた時代は、リース会
計がなく、リースによる多くの機器が未管理状態でした。リ
ースで導入しようが、導入した機器が使われなくなっていれ
ば違約金を払い解約し、会計上一括処理が必要です。いわば
固定資産の除却と同じでしょうか。
当時、リースで導入されている機器の管理はずさんそのもの
でした。経理部と総務部と一緒になってシステムを作り、期
末の棚卸時には、固定資産と同様にリース資産の棚卸をはじ
めました。
ソニー本社でリース資産の管理を尋ねましたが、当時、ソニ
ー本社でもこのような対応はやっておらず、リース資産の管
理に関しては、在籍していた子会社のほうがはやかったこと
を自負していた思います。
現在では、当たり前のようなことですが、当時、面倒な仕事
を積み上げることによって企業の管理レベルが格段にあがり
ました。なにげない仕事でも、どこに意味があるかわかりま
せん。私の経験では人がやり残した仕事や嫌がる仕事は、多
くの学びがあり、意外と企業活動の重要な要になるものがあ
ります。仕事の好き嫌いをしているよりは、先ずなにごとも
やってみることでしょうか。意味は、後からついてくること
も多くありました。