労働基準法と労働契約法の違いは、労働基準法は、国が雇用
主に課した必要最低限の労働条件を明示したもので公法です。
他方、労働契約法は、企業と労働者の間で締結する労働契約
についての基本的なルールを規定した法律で私人間の契約に
ついて規定した私法です。
労働基準法や労働安全衛生法には罰則が設けられていますが、
労働契約法は私法であるため罰則が設けられていません。た
だし、違法な労働契約の内容は無効となります。労働紛争に
発展した場合など、労働者から民事訴訟を起こされると損害
賠償などの義務を負う可能性があります。
労働契約法とは、雇用主が労働者を雇い入れる際に締結する
労働契約に関して基本的なルールを定めた法律ですが、なぜ、
新たに法制度化されたのでしょうか。理由は、就業形態の多
様化にともない労働契約に関する個別労働紛争が増加したこ
となどが挙げられます。労働紛争を解決するための労働契約
の基本ルールが必要となり、平成20年3月に施行されました。
とくにこれまで十分な対応がなされていなかった有期労働契
約に関して、平成25年4月1日以降に締結された有期労働契約
について契約更新の期間が通算で5年を超える場合は、無期
労働契約への転換を労働者が申し込みできるようになりまし
た。さらに、これまで最高裁の判例をもとにした雇止めを無
効にするルールがありましたが、「雇止め法理」を法制度化
したことです。また、同じ雇用主と労働契約を結んでいる有
期契約労働者と無期契約労働者に、正当な理由なく異なる労
働条件を適用させることを禁止しています。これは給与や労
働時間に限らず、労働契約に含まれている服務規程や教育訓
練、福利厚生など一切の労働条件が適用となります。
わが国における労働形態は、終身雇用制を前提にした正社員
型雇用でしたが、近年、契約社員やパートタイマー、アルバ
イトなど有期雇用契約による社員が増加していることから労
働契約の中身に関して細やかな規定を設けるにいたっていま
す。当然、昨日書きましたが、就業規則には、それぞれの雇
用に対応する規定が必要になりますし、労働契約法に準じた
内容を網羅することが必要になります。
わが国にように就業規則すらまともに作られていないような
企業では、労働契約法を含めた対応など無理ではないでしょ
うか。
しかし、時代は確実に雇用の多様化に伴い、それらに対応し
た法運用を企業や経営者に求めています。中小企業には、会
計だけにとどまらず人事、労務といった雇用全般にかかわる
対応を怠りなくやらねばなりません。企業を成長させるとは、
国の要請による法律を守りながら、社員を雇用し、しかも儲
けを出すという偉大な役割を担っているということかもわか
りません。