ソニー子会社時代に気がついたことですが、ソニーという企
業は経営者が経営者よりも優秀な人材を集めていたようです。
企業の成長には人が欠かせません。とくにあらゆる分野で専
門的知識をもっている人達が活躍してくれなければ、よい製
品は生まれてこないでしょう。その意味では、企業は経営者
以上に優秀な人材が求められるということではないでしょう
か。

中小企業の経営者を側でみていると、ソニー子会社時代と違
い経営者本人が一番優秀だと思っておられるようでした。
「頭は一つでよい」と話しておられましたから自分が一番優
秀だということを言っておられたと、私は感じました。また、
その時代をみればその対応が正しかったように思えます。
もっとも、当時でも経理や人事に関してはそれぞれの責任者
の話をよく聞いておられましたから、徐々に優秀な人材を集
めておられたようです。現在ではどうでしょうか。話は聞け
ませんが、社内体制をみれば、経営者ご本人より優秀な人材
を確保しておられるようにみえます。

企業の成長にはステージがあります。ステージごとに経営者、
社員のおかれた立場は変化するものです。創業からまもない
頃は経営者の能力だけで企業は成長していきますが、企業規
模が拡大し、専門分野が増えてくれば、多くの優秀な人材が
必要となります。多くの頭（人間）をまとめて、事業として
何を選択し、何を捨てるかの判断が求められてきます。経営
者の仕事の中心はこのような判断や決断になっていくようで
す。経営者の仕事のステージは、優秀な人材に仕事そのもの
を任せていくことに変化していくようです。自分より優秀な
人間がいるのだ、と確信できるようになるからでしょう。
経営は、多くの複合した要素がありますから、書いているほ
ど単純ではありませんが、それでも仕事の権限移譲ができて
いる企業ほど、紆余曲折はあってもよい意味で企業を成長、
発展させているのではないか、と私は考えています。