日本の取締役会では活発な議論などおこなわれていないでし
ょう。理由は、経営に問題などないことが前提になっている
からです。また、多くの取締役は、代表権をもつ経営者から
指名されているからです。
私も多くはありませんが、取締役会に同席していましたが、
なんら議論がないことも多かったでしょうか。なにかあって
も代表取締役の一言で議論は終了です。そもそも取締役会で
多くの時間をかけて議論するような段取りはされていません。
そこには会社法が取締役会で取締役に一任することが認めれ
ていない項目が決まっており、それ以外は、取締役が意思決
定することになります。
取締役会決議事項
一 重要な財産の処分及び譲受け
二 多額の借財
三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
四 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
五 第六百七十六条第一号に掲げる事項その他の社債を引き
受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める
事項
六 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確
保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社
及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するた
めに必要なものとして法務省令で定める体制の整備
七 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく
第四百二十三条第一項の責任の免除
その中で六は、「取締役は、会社法その他の法令、定款及び
社会規範を遵守した行動をとることとし、法令遵守をあらゆ
る企業活動の前提とすることを徹底する」、また、「企業理
念」、「経営方針」及び「行動規範」を踏まえ、率先して当
社の社会的責任を全うすべく、適正な職務執行にあたる、と
されています。しかし現実の取締役会で、この点について深
く議論はされることはないでしょう。
理由は、取締役会が形式主義だからです。
本来、経営内部の問題は、監査役会、内部監査室、会計監査
人と三葉監査で対応していくことになります。そこで議論さ
れた問題が取締役会へ上がっていくのならまだしも、そのよ
うな体制が形骸化している企業では、毎回平穏無事な取締役
会が続くのでしょう。私の推測ですが、まずもって三葉監査
で対応している企業がどれだけあるのか、ソニーのように内
部監査機能が健全に発揮されていなければ、問題すら上がっ
ていないのではないでしょうか。
今日、流行のようですが、タレントやフリーアナウンサーな
どを社外取締役に就任させていますが、取締役をけん制する
だけの専門的な知識を有して、厳しい意見を述べることがで
きるのでしょうか。むしろ企業は、その宣伝効果でも期待し
ているように思うのは、私だけでしょうか。
今だ、経営のガバナンスがこの程度ですから、わが国の企業
の未来が怪しくなってくきます。すべての企業とはいいませ
んが、この時代だからこそ、実質的にガバナンスを機能させ
る仕組みについて経営者がいかに考え、実行しているか、と
いう視点でステークホルダーは経営者をみておかなければな
りません。取締役会の改革といえでも経営者の姿勢がすべて
です。