中小企業の経営者が支払う社会保険料は、大手企業と違い自
分で全額支払っているようなものですから大変です。大手企
業に限らず、企業負担分と従業員負担分は折半です。企業は
法定福利費で経費としますが、大手企業の社長は、社会保険
料を自分で全額支払っているとは思わないでしょう。中小企
業の経営者は、たとえ経費でも自分のお金と同じです。
令和5年度の社会保険料の内訳は、毎月の役員報酬が70万円
とすれば、健康保険料だけでも介護保険第2号に該当する場
合、全額で83,922円です。それを事業主と従業員で折半しま
す。従業員負担、事業主負担は41,961円になります。また、
厚生年金保険料は最高額で118,950円です。それを事業主と
従業員で折半して従業員負担、事業主負担は59,475円になり
ます。年間では、健康保険料の経営者負担分で503,532円、
厚生年金保険料は、713,700円で合計1,217,232円です。中
小企業の経営者は、この倍、2,434,464円を支払っている
感覚でしょうか。さらに所得税と住民税は約103万円ほど
になるのでしょうか。
大手企業では、このようなことで悩むこともないですから、
決まった役員報酬に対して自分の負担だけ考えればよいだけ
です。しかも健康保険料の上限は、月額82,149円であり、厚
生年金保険料は、月額の上限が59,475円ですから大手企業の
役員などからすれば負担は軽い、あるいは負担を感じること
もないのではないでしょうか。
ただし、上記金額は、協会けんぽで試算していますので、大
手企業の場合、企業の健康保険組合によって健康保険料には
違いがあります。
中小企業の経営者は大きな利益を出していれば別ですが、銀
行への返済と同時に常にぎりぎりでやり繰りしている場合も
あります。私が経験した経営者ではありませんが、従業員の
社会保険料の預り金にまで手を付けていました。論外ですが、
経営が厳しとはこのような状態なのです。しかも、消費税に
も手を付けていましたから言葉がありません。その結果、行
方をくらましました。もっとも、本業はそこそこでしたが、
自分の能力以上の事業に手を出したことが資金繰り悪化をま
ねきました。まじめに事業をおこなっていても中小企業にと
って社会保険料の事業主負担は相当重たいものです。私のよ
うな者でも、中小企業ではこのよう経費を含めて利益を上げ
ることがいかに大変かわかりました。だからこそ、キャッシ
ュを残す経営を継続しなければなりません。その意味でも信
頼できる会計士さんや税理士さんと相談しながら事業を進め
ていくことが大切ではないでしょうか。