ソニー子会社において部門を超えて社員間の連携が、どうし
てうまくできていたのか、とずっと考えてきました。ひとつ
には、経営マネジメントが社員の自由な活動を担保する仕組
みになっていたことがあります。しかし、それだけで社員横
断的な連携ができるわけがありません。当時のことをよく思
い出してみると、社員同士でお互いのやりたことなどを共有
していたことでしょうか。ただし、それには社員の能力を認
め合うという土俵があり、能力を認め合うといっても、人間
同士がどのようにして互いの能力を理解するのかは、やはり
雑談など、仕事と直接関係ない非公式な環境があったことで
しょう。
それから能力を認めるとは、会社の仕事の能力を認めている
わけではないということです。おそらく個人が自ら習得して
いる技術や知識などあらゆる方面の能力を出し合っていたこ
とです。会社で言うところの職務能力などとは大きく違いま
す。だからこそ、役職などを超えて議論ができるのです。要
は、学ぶことや挑戦することが好きな人たちの集まりだった
ということです。
それでもそのような人間は、全社員の20%ほどでしょうか。
このような少数の人たちが議論することからビジネスにつな
がるヒントが生まれていました。当然、非公式な議論は、積
み重なり、リーダーシップを取れる人が企画提案し、公式な
場へ運ばれます。公式な場に運ばれても多くの人たちと非公
式に議論を重ねていますから、経営者からの質問など的確に
回答できます。できない場合でも、すぐにメンバーと再議論
し、新たな提案ができます。その繰り返しだったように記憶
します。
自由にメンバーを集めて議論するのですから、最初からうま
くいくという保証などありません。しかし、この繰り返しを
やることでやろうとするビジネスの本質に近づていきます。
種を育てる人、種に栄養をやる人、種をプラントに植え付け
る人、いわば個人の能力を活かしながらビジネスを軌道に乗
せていきます。
ベースにあるものは、個人がそれぞれ自分で学ぶ知識など主
体的に取り組んでいることでしょう。このような社員がいる
企業は限りなく少ないです。だからこそ、ビジネスに大きな
差がついてくるのではないでしょうか。成長する企業には、
人を自由に活かしていく仕組みもありますが、それと同時に
社員個人も独学でいろいろなものを学ぶという姿勢がありま
す。このような社員のおかげで企業の視野が自然と広がり、
企業の成長プロセスを支えているようでした。