ニデックは、22年4〜9月期に過大配当、いわゆる分配可能
額を超過して配当したことがわかりました。配当は、企業
が稼いだお金から配当しますから問題ないように思います
が、会社法には配当可能な上限額、分配可能額があります。
この計算式は、結構複雑です。それでも企業の経理担当者
や株式担当者は、しっかりと学んでいるはずです。
むしろ、なぜ、分配可能額があるか、ということのほうが
重要です。理由は、債権者保護のためです。過度な配当を
すれば、債権者に対して企業の資金を流失させ、弁済能力
を低下させてしまいます。他方、株主は有限責任しかあり
ませんから、会社のオーナーでありながら債権者に対して
ほとんど弁済責任を負いません。そのため株主に無制限に
配当すれば、債権者はまったく保護されないことになりま
す。
これでは債権者はたまりません。そこで会社法は、仮に分
配可能額を超えて配当がなされた場合、原則として、債権
者は、過大に相当する額の支払いを株主に対して請求する
ことができます。また、過大配当に関する職務を行った取
締役等に対して、債権者は、過大に相当する額の支払いを
請求することができることになっています。
分配可能額に資本剰余金の一部がはいっていますから、仮
に利益がでていなくても配当できるという法の矛盾があり
ますが、実務的には資本剰余金から配当することはありま
せん。法律も人間が作るもの、非合理な規定があるといっ
たところでしょうか。もっとも、配当可能額は、数字上の
制限にすぎません。配当するための十分な手元資金がある
かどうかは別です。配当額が決まっても手元に資金がない
場合は、銀行から借入をして配当することになります。