企業で働けば賃金の支給がありますが、現在では、銀行振込
がほとんどでしょうか。一部には、現金支給をしているとこ
ろもあるようです。それでも一般的には、支給された給与は、
従業員が指定する銀行口座に支払われるのが普通でしょう。
しかし、中小企業、一部は大手企業でもありますが、企業が
給与を支給するための銀行を指定するところがあります。
結論から言えば、違法です。労働基準法は、賃金については、
労働基準法第24条において、(1)通貨で、(2)直接労働者に、
(3)全額を、(4)毎月1回以上、(5)一定の期日を定めて支払わな
ければならないと規定されています(賃金支払の五原則)。
例外として、口座振り込み、通勤手当の現物支給、退職金を
小切手で支払うことができます。ただし、労使協約や本人の
同意があれば、現金以外での支払いが認められます。
通勤手当を定期券として現物支給するには、労使協約の締結
が必要です。賃金の口座振り込みや退職金を小切手で支払う
のは、本人の同意があれば問題ありません。
賃金支払いには、前述した規則があるのですが、中小企業で
は会社が銀行を指定して口座を作らせたうえで給与を支給す
ることが前提となっているケースが多数存在します。理由の
多くは、取引銀行に対する配慮と振込手数料が若干安くなる
といったことではないでしょうか。同意書でもとっていれば、
問題ないでしょうが、当たり前のようにやっている企業があ
ります。企業側は、先ず労働基準法の規則を理解したうえで、
従業員へお願いすることが必要です。それでも従業員から拒
否されれば従業員が指定する口座へ振込みをしなければなり
ません。
しかも、今年度から賃金のデジタル通貨払いが可能となるな
ど、多様な支払形態が誕生しています。このような対応が柔
軟にできない企業では従業員サービスで劣勢に立たされると
想像されます。
中小企業では人が集まらないといわれますが、それでは労働
基準法などの法律を少しでも理解しながら人を採用している
のか、と私は聞いてみたくなります。人が集まらい原因はこ
れだけではありませんが、あまりにも経営がずさんなのです。
このような体制を少しづつ改善していく努力をしている中小
企業では人の採用や雇用がうまくいき、業績も順調なのでは
ないでしょうか。