私が在籍していたある企業では、株式公開を目指した社内体
制の構築を進めていました。それ以前は、そうとうやんちゃ
な企業だったようです。経営者もやんちゃな方でしたが、や
はり企業を拡大し、発展させるためには従来のやり方ではよ
くない、と言われていました。もっとも、人は急に変われな
いので時間をかけて対応されておられたようでした。この経
営者は、やんちゃなタイプにしては、人の話をよく聞き、し
かも物事を性急に進めるではなくゆっくりと時間をかけなが
らやっていかれる方でした。
これまでのやり方では駄目なので普通の企業へ変えていきた
いと、しばしば口に出しておられました。実際、気長に社員
の育成をやっていましたが、気長というのは、言葉は簡単で
すが、大変なお金と時間ががかかります。それでよい、と確
信されていました。また、少々のことで、この姿勢はぶれま
せんでした。だからこそ、当時、200名足らずの社員数が、
現在では10,000名弱の企業に成長しているのでしょう。
企業はそれぞれの経営者のもとに生まれますが、その成長過
程における社員へ影響は、まさに経営者の姿勢そのものです。
経営者が、まず変わらなければ、社員が変わるわけがありま
せん。いろいろな問題はでてきますが、この経営者は、常に
自ら問題に立ち向かって改善、改革をやっておられました。
はたからみていても本当に大変なことだと、感じていました。
お金をかけ、社員の心をつかみ、そして自分自身に精神的な
負担をかけながらの挑戦でした。
企業には、売上だけが大きくなる企業と、経営者自身も大き
く変化していく企業があります。片方は張りぼて企業であり、
他方は、鍛え抜かれたアスリートのような企業です。その差
は、どこから生まれてくるのでしょうか。経営のような長丁
場には、経営者の個性とともに、必ず原理原則があるもので
す。