企業において人を活用することほどむずかしいものはないで
しょう。理由は、簡単です。人はそれぞれ違うからです。家
庭ですら子供たちや妻と、それぞれの人間を理解するのはむ
ずかしいものです。企業であれば、さらに困難だし、社員を
理解しているという幻想をもっていることがほとんどでしょ
うか。
人を活躍させるためには、人間の本質を知ることでしょうか。
私は、自分の生きたいようにわがまま主体に生きてきました
が、今読んでいる本(井深大と盛田昭夫/郡山史郎著)では、
その生き方は間違いではなかったようです。
「盛田さんは転職について、独特の見解を持っていた。〃会
社は自己実現の場〃という考えが根底にあり、どこの会社に
所属しても自己実現ができれば同じなのだ。会社に忠誠心な
ど持つ必要はない。盛田さんらしい合理的な就職観だった」
私はそもそも組織が苦手です。小学校時代から自分で感じて
いたことですが、組織や人との関係はほどほどでよいと行動
してきました。それでも”二師三兄五友”に恵まれて、ここま
でなんとかやってこれました。このことに感謝の気持ちは忘
れたことがありません。それでも自分がこうだ、と思うこと
を実行してきた人生なので、後悔がありません。すべて自分
ひとりで決めて行動してきた結果だからです。
中小企業の経営のむずかしさは、人にどのように活躍しても
らうかという点です。そのためにいろいろな策を用いますが、
これが千差万別で策士策に溺れる状態でしょうか。蟻地獄の
ようになっている企業を目にします。
多くの企業でみてきた社員を活用するための手段は、仕事で
縛る、規則で縛る、給与で縛る、権力で縛る、ネームバリュ
ーで縛る、ベンチャーというイメージで縛る、といったその
本人以外に重点があるように思えました。なにかやる主体は、
常に経営者にあり、ソニー子会社に在籍していたときのよう
に、「私」という個人にはないのです。
本来、経営とは、もっとシンプルでよいのではないか、と思
っています。個人を尊重する経営でしょうか。おそらくほと
んどの経営者は、夢とたわごとだと思われるでしょう。しか
し、やってみなくては、何事もわかりません。そのような挑
戦をする経営者がでてくることが日本の将来を変化させてい
くのではないか、と私は考えています。あまりにも複雑化し
た現代企業社会にあって、人間が活躍できる企業というのは、
私という個人が主体とになって仕事ができることで生まれ変
わるように思えます。その意味では、中小企業ほど人に活躍
してもらえるのではないでしょうか。