今年度上半期における上場企業の不適切会計に関して、(株)
東京商工リサーチは、過去2番目の35社(36件)、最多はサ
ービス業の9社、と7月21日に公表しています。
2023年上半期(1-6月)に不適切会計を開示した36件の内訳
は、経理や会計処理ミスなどの「誤り」が20件(前年同期比
11.1%増)で最も多かった。次いで、従業員などによる着服
横領が11件(同22.2%増)、子会社で不適切会計処理などの
「粉飾」が5件(同54.5%減)だった。
産業別の社数は、最多がサービス業の9社(前年同期比125.0
%増)。以下、製造業の7社(同41.6%減)、建設業(同25.0
%増)と卸売業(同66.6%増)が各5社と続く、とあります。
注目されるのは、従業員などによる着服横領が11件(同22.2
%増)ですが、上場企業の場合、相応な内部統制、内部けん
制、あるいは内部監査によって、横領などの不正行為を未然
に防ぐ仕組みが作られています。それらの機能が働いていな
いということです。いわば手を抜いてた体制になっているの
ではないでしょうか。
未上場企業では、ある意味で未防備なことが多々ありますが、
本来であれば、上場企業ではむずかしいはずの着服や横領が
あるのは、社内における内部けん制機能が効いていないとい
うことです。
内部統制や内部けん制の機能を運用するには、基本に忠実に
実行しなければなりません。手間も時間もかかります。面倒
でもあります。それで手を抜くと、ある日突然、これらの不
正が現れてきます。同時に、企業の財務状況を揺るがすこと
になる場合があります。
メディアを賑わしている横領事件がありますが、未上場企業
の体制では致し方ない面がありますが、上場企業ではあれば、
株主に対する責任能力を疑われることになります。経営者が、
どこを向いて経営しているかを図る指標が内部統制であり、
内部監査機能です。これらの体制が社内で機能しているかど
うかチェックするのが、監査役や社外取締役です。社員が自
由にやっているソニーのような会社だからこそ、事業活動に
おける適法性を確保するために、、内部統制や内部監査はし
っかりとその体制ができており、社員は、それらに対応して
かなり緊張した行動が求められます。内部監査などの機能が
本来の力を発揮しているから社員は緊張感をもち、日々のビ
ジネスに自由にまい進することができるのです。
言葉はよくありませんが、決して社員が放し飼いされている
わけではないのです。自由な社風と社会的責任の間に、内部
統制、内部監査や監査役、あるいは社外取締役の責任ある機
能が働いているのではないでしょうか。