企業が営業活動を行う際には、給与手当や旅費交通費、ある
いは水道光熱費など「費用・経費」が必ず発生します。会計
上の「費用・経費」のことを法人税法上は「損金」と呼びま
すが、会計上の「費用・経費」と法人税法上の「損金」の金
額は必ずしも一致しません。「費用・経費」に対する認識のズ
レからくるこの差額については税務申告で調整がする必要が
あります。
一般的に、会計上の費用の計上は、発生主義によって行われ
ます。発生主義の考え方は、、費用は収益の計上と歩調を合
わせて計上されるのが特徴でしょう。収益計上時期とのバラ
ンスをとるために、合理的な見積書などによって、費用をあ
らかじめ計上しておくこともあります。
それに対して、税務上は、販売費、一般管理費の計上は、債
務確定主義によって行われます。債務確定主義とは、法的に
支払い義務が確定した時点で損金を計上するという考え方で
す。債務確定主義の要件は、次の通りです。
(1)債務が確定していること
(2)具体的な給付をすべき原因となる事実が発生している
こと
(3)金額を合理的に算出できるものであること
よく問題になる例は引当金です。たとえば、賞与引当金は、
会計上、賞与引当金繰入額として費用として認識されます。
大手企業などでは、賞与査定期間が設けられていますから、
夏季賞与の対象期間(支給日2023年6月10日)が、2
022年9月1日~2023年3月31日となっているとす
れば、会計上、2022年度に引当金が計上されています。
ところが税務上は、賞与引当金が認められません。
賞与の損金算入時期は、あくまで賞与を従業員に支給した2
023年6月になります。労働という役務の提供を受けただ
けでは、法律上の賞与の債務が確定していないと考えている
ためです。納税者間の公平を確保するためには、見積額(引
当金)を認めないのが債務確定主義です。
企業においては、賞与の支給は在籍基準にしていることがほ
とんどではないでしょうか。そのため賞与支給と引当金が必
ず同額になるわけではありません。また、賞与引当金で計上
した額は、あくまで概算の支給率に基づいていますからいわ
ば予定額ということになります。その意味では、税法が考え
る債務確定主義は妥当なのかもわかりません。ただし、企業
会計では、企業活動の収益と費用を把握することで当該年度
の経営状態を把握する必要があり、とくに管理会計では各種
引当金の計上を毎月おこなっています。