日本社会や日本企業も同じですが、なにもしない方がよい社
会です。理由は、なにもしないでそこそこ回っているからで
しょうか。そんなところに、なにかやりましょう、というよ
うなタイプの人間は迷惑がられます。それでも日本社会も日
本企業も変えてやるといった人たちのおかげで、ここまでこ
れているのですが、いつしか冒険の必要がない社会を人間は、
人間自身で作っていくものです。うまくいっているものをな
にを今更ということになるのでしょう。社会全体がそのよう
な生き方になっていくようです。
それでもうまくやれている時代はよいのでしょうが、今の時
代のように閉塞感が漂ってくると、人間は経済的な観点から
疑問をもつようになってきます。いろいろな人の話の論点が
変化してきました。もっとも、話だけなら昔から沢山あるの
です。しかし、現在では少ないながら行動に移す人たちがで
てきたことが大きく違うことでしょうか。これも、実は、マ
スコミが現在報道しているだけであって、昔から日本の閉塞
感を嫌って外へでていった人たちは多くいます。
私のような中途半端な人間は、悶々としながら会社を移ると
いうことを繰り返すのですが、それでもソニー子会社へ入社
でき、創業期を知る経営者と出会えたことは幸運でした。ソ
ニーという会社、私のような下っ端を働かせる企業だったか
らです。下っ端が働くとは、自分が主体となって仕事ができ
るということです。それを経営マネジメント、サラリーマン
社長自身に言わせれば、俺はそれしか知らん、というのです
が、としてやっていくという仕組み、ここも自然体というか、
抽象的なものなのですが、によってそのようなことが可能と
なっていました。摩訶不思議な組織と人たちなのです。
なにもしない方が得ではなく、なにかやった方が得な企業な
のです。実は、なにかやった方が得というのは、私が知る限
り中小企業の中に多くあるように思えます。人材がいないと
いう前に、中小企業は、人がいないのですから下っ端に働い
てもらわなくてはなりません。ただし、むずかしいのは、主
体性を持たせて働いてもらうことです。この点が中小企業の
経営者にはできないのです。反対に考えれば、それができる
中小企業の経営者がいる企業は成長していくということでは
ないでしょうか。