花王の業績がよくありませんが、問題のひとつはグローバル化
への対応がうまくできていない点だ、と考えています。この点
は、8月8日に投稿しましたが、2019年以降業績が悪化してい
ると、ある記事を目にしました。いろいろな要素があるのでし
ょうが、私は、この問題の根っこに花王の販社のことがあるよ
うに感じています。
花王が販売会社を新たな形にしていくことは、私が営業おこな
っていた時代、1980年前後から強力に進められていました。そ
れまでは、多くの日用品メーカーと同じように大手の卸問屋な
どを活用して販売していましたが、花王自体で販売会社をもち、
配送や販売促進を一手におこなうという形態に変えていました。
私は、1988年頃、大分県を担当していましたが、そこで花王の
販売会社の社員からシステムを活用した販促手法などを学んで
いました。私が在籍していた企業では考えられないような仕組
みで営業活動がおこなわれていました。
花王がこのようなスタイルの販売へ転換しようと考えたのは、
大手卸(問屋)まかせの販売では、競合他社との競争が卸の時
点でおこなわれるため、だいたい価格競争になりますが、直接
販売先を握れば末端の消費者へ自社に有利な環境(条件)で商
品が届く(販売できる)といった思惑があったのではないか、
と私は推測していました。
花王販社の経営には、地元の有力卸が参加していたため、卸自
体も販社の全国統合にそれほど拒否感はなかったようです。し
かし、その後、花王販売株式会社となり、その時点で花王が51
%を超える株式を握り、役員を派遣しています。その経緯は、
「花王広域販社の全国統合と統合直後の経営状況」を読んでく
ださい。
私は、今般の経営悪化の根っこに販社の経営を花王が握ったこと
が裏目にでていると考えています。経営権を握れば、当然、親会
社の花王から役員が派遣され親会社主導の経営へ移行していきま
す。マーケティング力がある花王のことですから、ブランドと機
能性をもった商品を高めの価格帯で販売できると考えていたでし
ょう。
ところが時代は、大手量販店からホームセンターやドラッグスト
アといった地域に細かく販売拠点をつくるドミナント出店へ変化
し、大手量販店への直送などは減っていると思われます。むしろ、
現在はエリア別の小口配送やきめ細やかな販売促進活動が中心で
はないでしょうか。花王は、ソニーと似ていて商品開発力などが
優れていますが、いかんせん花王の製品は、化粧品やケミカル事
業を除けば、日用雑貨の範疇を出ることはありません。ソニーで
もコモディティ製品における商品力は、とっくに峠をすぎていま
す。すでに、私が在籍していた時代のソニーではありません。
花王の敗因のひとつは、マーケットを直視していなかったことで
はないか、と私は考えています。この点は、P&Gのほうが泥臭く
対応しており、花王を圧倒しているように見えます。販社制度は、
うまく機能すれば、大きな利益を獲得できるのですが、ひとつ間
違うと、現場からの重要な情報が抜け落ちる危険性をはらんでい
ます。コスト削減ばかりに目がいくと、上手の手から水が漏れる、
ということになりかねません。花王が、この先、どのように切り
返えしていくか、非常に興味がわくところです。