建設業における工事原価は、個別原価計算方式を採用してい
ますが、ここにも大きな課題があります。原価の付替え、先
送り、資産化（原価名目以外に付け替える）などの不正のケ
ースです。その他、諸勘定項目には滞留分や架空売上などが
あります。さらに貸付金には第三者を通して投資案件に資金
が流れていたりします。

このような不正は、契約書やその他の書類でみつかることが
少なく、証憑のチェックだけでは、なかなかうまくいかない
ものです。顧客とのトラブルは、多くの要素があり、工事上
の重大なミスが発見されたり、不正であれば工事費の水増し
があったり、あるいは、そもそも架空工事であったりするこ
とがあります。

社内における監査では、書類だけでなく、工事物件の詳細内
容や工事の途中経過、工事中断に至る経過などを十分に確認、
調査することが求められます。先ず、工事物件を直接みるこ
とが重要です。工事中断時の物件の保全は結構むずかしさが
あります。直接担当者と物件をみながら説明してもらうこと
で、工事再開の目途がわかったりする可能性があります。

建設工事に関しては、企業規模が大きくなるほど、また、未
上場企業のように内部けん制ができていない組織ほど、社員
と取引先との関係を通して多くの不正行為があるものです。
帳簿だけでみればわかる不正ばかりではありませんから、面
倒でも細かな仕組みを構築しておくことが必要になります。

【参考】

資料：マネーフォワード