法人税法は、できるだけ損金の計上を遅くしょうとする傾向
があります。繰延資産は、その考え方がベースにあります。
将来、数年間にわたって効果が発揮される支出であれば、各
事業年度に配分して損金を計上するべきだという考え方です。
このため繰延資産の計上をできるだけ限定しようとする会社
法とは考え方が真逆です。法人税法上の繰延資産は、会社法
と会計基準よりもかなり範囲が広く定義されています。
法人税法で定める繰延資産は、会計基準上の繰延資産プラス
税法固有の繰延資産となっています。その項目は下記(参考)
のとおりです。会計基準上の繰延資産については、税務上も
柔軟な償却が認められていますが、税法固有の繰延資産につ
いては、償却費の損金算入には厳しい制限があります。
たとえば、税務上固有の繰延資産としては、建物を借りると
きの礼金が典型でしょうか。5年間(賃借期間が5年未満の
ときは、その賃借期間の年数)で償却しなければなりません。
会社の任意で償却することは認められません。
私が在籍していた企業の経営者は、自社の広告宣伝費用を繰
延資産として計上しようとしましたが、株式公開を目指して
いたため、会計基準通りに計上するように監査法人から指導
されました。経営者は、どうしても自らに都合がよい方に目
がいきますが、株式公開ともなれば、会計基準に基づいた処
理が必須となります。株式公開では、このように企業会計へ
の転換が必要になりますから、中小企業時代の税務会計から
脱却していくことが求めらるでしょう。
また、株式公開を前提に経営をしているようであれば、はや
めに公認会計士を顧問にして会社法に基づく財務会計に関し
て指導を受けることをお勧めします。
いずれにしても判断がむずかしい部分がありますので、税理
士さんや会計士さんとよく相談してください。