交渉力のベース
訴訟をおこなうと必ずといっていいほど、和解案が提示
されますが、裁判官の和解の能力には、相当な個人差がある
ように思えます。対立する当事者の意見に寄り添いつつ、妥
当な解決策を受け入れさせるには、論理的な能力だけではな
く、それぞれの人間に対する共感力や表現力といったものが
必要になるからです。私などは、白黒つけることだけに注力
していますが、たまにそういう考え方もあるのか、と裁判官
の和解案に出会うことがありました。なんだかきつねにつま
まれているようのな状態でしょうか。提示がうまく、双方の
顔を立てているな、と妙に感じることがありました。
私の仕事のやり方
このような交渉能力は、なにも裁判官だけに求められるもの
ではないでしょう。私は直截的ではっきりとした物言いです
から、相手から信頼されるタイプではありません。それでも
信念をもって対応するのは、相手の将来を考えているからで
す。そのとき理解できなくとも、人生のなかで気がつけばよ
いという考え方でしょうか。
お付き合いをした弁護士の方は、私の意向を尊重してくださ
る方でした。弁護士としての見解は述べられますが、当事者
は担当の私と企業ですから、問題の本質を理解しているのは
私であり、どのような結果になっても、私自身が責任をとる
覚悟で対応していました。
原則、安易な和解はしませんでした。勿論、納得がいく和解
案に同意することは当たり前です。私は、なにがなんでも白
黒つける決着を求めているのではなく、勝っても負けて合理
的な結論を求めているだけであり、和解か、判決かを求めて
いるのではありません。
弁護士から学んだこと
お付き合いした弁護士は、私の性格をよく理解してくれ
ていましたから、戦うときには戦うべき準備をし、和解もあ
るような場合は、両面作戦で丁寧な準備をしてくれました。
私は先の見通しがつくと、すぐに動くタイプですから、土日
であても打ち合わせをしたいタイプです。弁護士の方もよく
土日に仕事をされていました。訴状を書いておられたり、あ
るいは、専門書の執筆をされていたりと、土日でも打ち合わ
せができる方でした。
仕事がうまくいく理由の中には、このような人の在り方やタ
イプ、性格などがあるのかもわかりません。
私のように厳しく結果を求めていく、少々視野が狭いタイプ
には、包容力があり、専門性が高く、勉強家タイプの人がそ
ばにいてくれたから仕事をうまく進めていくことができた、
と思っています。
人との出会いは、やはり偶然とはいえ、人生を豊かにしてく
れる大切な要素なのかもわかりません。