問題が発生するのが経営
企業経営は規模が拡大すれば、問題が連続して発生してくる
ものです。理由も簡単です。人間が問題を発生させるからで
す。シンプルな図式ですが、人間によって発生する問題をい
かにうまく対応するか、あるいは未然に問題発生を防ぐ手立
てができるかが、常に経営者は問われています。それが経営
というものではないでしょうか。
もっとも、経営者自身も問題を発生させますから、経営
は、なかなか一筋縄ではいきません。
労働問題も経営における重要な課題のひとつです。経営職や
管理職が誤った対応をすれば、たちまち企業全体に影響を及
ぼします。さらに営業活動や社会全体に影響する場合もでて
きます。慎重な対応が求められる理由です。
ヤマト運輸の労働問題
ヤマト運輸では、ヤマト運輸のサービスの一つであるカタロ
グやチラシなどを全国に送る「クロネコDM便」の各拠点で
の仕分けを担当するパート従業員には「雇用契約は2024年1
月31日をもって終了します」という文書が6月に配られたと
いうことで、労働問題化しています。
私のレベルからみても、あまりにも稚拙な対応で驚きました。
経営者が気になりましたからEDINETの有価証券報告書
を確認してみると、現場上がりの方が経営職に多くついてい
るようです。人事労務の専門家がいないのではないか、と思
っています。プライム上場レベルの労務管理ではないからで
す。本来であれば、人事労務担当役員は、顧問弁護士と相談
したうえで、しっかりと発表すべきでした。また、ヤマト運
輸労働組合等が組織されていますから、事前の交渉はなかっ
たのか気になるところです。非正規社員ですから労働組合に
加入していないといったことも考えられるでしょうか。それ
にしてもお粗末な経営判断としか言いようがありません。
中小企業の労働問題では和解がよい理由
ヤマトの労働問題はこれだけ大きくなると、訴訟、あるいは
団体交渉などになるのでしょうが、最終的な結論がでるまで
には長い時間がかかることになるでしょう。
中小企業では、このような大きな労働問題になるよりは、従
業員の一人、あるいは二人といった少人数での労働問題が多
くあるのではないでしょうか。
中小企業の場合、労働問題が訴訟に発展するようなケースに
なれば和解を受け入れるがもっともよい方法です。和解には、
和解なりの利点あります。理由は、付随的な取決めができる
からです。
判決の場合には、あくまで原告の請求について判断がされる
だけで、「賠償金として100万円支払え」といった、シン
プルな判断がなされるだけです。これに対して和解の場合は、
「解決金を支払って退職してもらう」、「口外禁止条項を含
む」といった柔軟な取決めをすることができるので、中小企
業にとって大きなメリットがあります。
経営者は、当たり前ですが、「解決金を支払ったことを他の
社員に知られたくない」といった判断が働きます。判決では、
このような経営者の要望をうまく反映することができません
が、和解であればこれらが可能となります。
判決の場合、必ず公開されますから、社員が他の社員に判決
内容を伝えたからといって違法ではありません。
労働事件では、経営者は非常に不利な立場にあるということ
を認識しておいたほうがよいでしょう。
判決となれば、経営者不利の状況だけが強いられる場合が少
なくありません。不利な状況のなかでできるだけ自社のダメ
ージを最小限にとどめるために、和解による解決を目指すべ
きだと考えています。私は、人事労務の担当者して、経営上
の問題をどのように解決するのがよいかを弁護士と相談しな
がら行動してきましてきましたが、会社側が不利な場合は、
必ず和解を選択しました。