遊び心と気持ちの余裕
人というのは、それぞれ違いますから複雑でなかなかむずか
しい存在です。他方、多くの人が共同することで現代社会が
成り立っていますから、人というは、社会のなかで非常に重
要なポジションにいるのでしょう。
大手企業と中小企業の差はどこにあるか、問われれば、私は
気持ちに余裕があるかないか、だと即答するでしょう。両方
をみてきた私は、こう答えることになります。中小企業の場
合、経営者にも従業員にも気持ちの余裕がないのです。もっ
とも、なかには大手企業でも気持ちに余裕がなく仕事をして
いる企業もありました。特徴的なことは、「遊び心がなく仕
事をするにも余裕がないのです」。なにかにとりつかれたよ
うな状態、この場合はコスト削減のようでしたが、資金力は
あってもこの状況ですから、中小企業においては致し方ない
のかもわかりません。
私がみてきた極めて少ない範囲だけですが、新たなことに挑
戦する気概がある企業ほど「遊び心と気持ちの余裕」が
あるようでした。企業全体でみれば、遊び心や気持ちの余裕
がない人が多かったのですが、その企業のある部署だけは、
責任者に遊び心と気持ちの余裕があり、そのなかで私は、本
来もっている遊び心と気持ちの余裕をうまく活用しながら仕
事をしていました。
「遊び心と気持ちの余裕」と仕事の関係がどのようなものか、
私には理解できませんでしたが、遊び心は私にとって心地よ
く、仕事もうまくいっていました。
ソニー子会社時代は、まさに「遊び心と気持ちの余裕」で仕
事ができた時代です。それは多くの人たちのなかに「遊び心
と気持ちの余裕」があり、仕事を楽しみながらできた時代だ
からでしょうか。
人間が現代のようにさまざまな文化や科学を発達させたのは、
好奇心をいつまでももち続けた結果だと言われていますが、
幼少期の脳は発達期間であり、幼年期が延びるとそのぶん脳
もよく発達するといわれています。私のようにおとなになっ
てもよく遊ぶことが好きな人間は、ネオテニー の特徴で、
子どものような好奇心をもち続けている証拠かもわかりませ
ん。別な言い方をすれば、成熟していないとも言えそうです。
社会にとっては、どちらがよいのでしょうか。
現代社会の閉塞感とダイナミック性
現代社会も同様に「遊び心と余裕」がないように感じている
のは、私だけでしょうか。もっとも、30年近く賃金はあが
らないなかで、遊び心や気持ちに余裕をもって仕事すれば、
などと言おうものなら、なにかおかしなことを言っていると
いわれそうですが。。。
遊び心や気持ちに余裕をもつというのは、経済基盤だけに依
存しているものなのか、というのが私のなかの素朴な疑問の
ひとつです。
経済的に厳しくなくとも遊び心と気持ちに余裕をもてない精
神的環境なっているのが現代ではないか、とも感じています。
ひとつには、あまりにも多く情報があるからでしょう。情報
による拘束がきつい時代とでもいうのでしょうか。多くの情
報のなかには有益なものもありますが、私が普通に目にする
メディアなどの情報は、人から遊び心と気持ちの余裕を奪っ
ていくようにもみえます。
人は、そもそも自由な生き物なのですから、このような社
会を自由に泳いでいけばよいだけと、私はいつも考えて行動
しています。また、自由に泳ぐ人たちが多くなてきたことは
本当によいことだと思います。この人たちをメディアなどで
みていると仕事で成功しているのですが、不思議と「遊び心
と気持ちの余裕」があるような気がします。片や、今の時代
は過度な拘束、この場合、精神的な拘束ですが、普通以上に
感じてしまう人たちも多くなっているのかもわかりません。
企業の創業期は金儲けからはじまる
中小企業に余裕がないのは、一にも二にもお金がないからで
す。そんな中でも経営者に遊び心と余裕があればなんとかな
るのでしょうが、なかなかこのようなタイプの経営者はいま
せん。
多くの中小企業の経営者は資金繰りに明け暮れていました。
入社まもないころの余裕は消え、顔色が段々と悪くなるのが
わかります。自分に言い聞かせるように新たなビジネスに挑
むのですが、無謀といわざるを得ませんでした。既存事業は
利益がでていただけに残念でなりなせん。従業員の顔にも気
持ちの余裕なくなっていくのがわかります。
中小企業だけではありませんが、企業というところは、常に
利益を出して、気持ちの余裕がもてる状態が必要です。そこ
に遊び心を取り入れて企業を成長させるマネジメントができ
ればベストでしょう。なかなかむずかしいのですが。。。
中小企業の創業期は、この意味では非常に重要だと考えてい
ます。利益を生み出すことができるかどうかは、創業期にお
ける経営者の執念とずば抜けた能力によるものだからです。
私のような「遊び心と気持ちの余裕」などと抜かしている人
間にはみえない世界で戦っているのだと、思います。だから
こそ、私のような未熟な人間に対して、いつもサポートをし
てくれる優しさがあるのです。修羅場をくぐった強さと優し
さとでもいうのでしょうか。
創業経営者や創業期を作った人たちにこのようなタイプの人
たちがいるのは、それなりの理由があるからでしょう。