中小企業の経営者が超えなければならない壁とはなんでしょ
うか。答えは、いたって簡単です。「会計」の知識です。
経営者は、企業を拡大していくのであれば「会計」について
知ることが求められます。理由は、大企業は、企業会計に
基づいて事業が運営されているからです。中小企業でおこな
われている税務会計と違い、企業会計についての知識が
なければ経営の規模拡大はできません。経営のレベルが格段
にあがります。このギャップに苦しむ経営者は、厳しい言葉
ですが、中小企業経営のままであり、それ以上の事業の拡大
はない、と私は考えています。それくらい重要なポイントで
す。
では、そのギャップは大きなものなのでしょうか。実は、極
めて小さなものなのですが、明確にギャップが存在します。
法人税の計算は、原則、利益ベースですが、法人税法第22条
第4項にも「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準
に従って計算されるものとする」と書いてあり、企業会計で
「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に準拠」とな
っています。
それでは違いの理由はなにかということになりますが、税法
には「特段の定め」、あるいは「債務の確定」に厳しい規定
があります。ただ、これだけのことなのです。それでも複雑
に感じてしまうのではないでしょうか。
基本的な違いのひとつに引当金があります。大企業では、必
ず賞与引当金を計上していますが、次の根拠によって計上
が認められています。
① 将来の特定の費用または損失であって、② その発生が当期
以前の事象に起因し、③ 発生の可能性が高く、かつ、④ その
金額を合理的に見積もることができる
一方、税法では、債務確定要件においてその期に債務が確定し
ないとして、賞与引当金は「損金」として計上できません。
このように企業会計と税務会計では、少しの違いが発生します。
また、中小企業では、そもそも賞与引当金を計上することさへ
していません。この理由は、賞与を出すか出さないか、規定も
もなく、その時期になってみないとわからないので、賞与引当
金を計上するわけがない、といったところでしょうか。
将来、事業を拡大しようという中小企業の経営者は、しっかり
と計画を立てて、採用し、雇用をおこない、さらに賞与の評価
対象期間における概算額を賞与引当金として計上しておかなけ
ればなりません。常に、売上と費用を確認し、利益を把握して
おくためです。これができないと、企業は決して大きくならな
いのです。もっとも、引当金は、賞与引当金だけではありませ
ん。重要なことは、経営者は企業会計の概念を大枠で把握して
おくことです。経営の実務は、企業規模が拡大するにつれて、
専門性を有する人材を採用することで対応していくことになり
ます。
資料:株式会社日立システムズ