大企業出身者を中小企業が雇用する場合、いくつかの課
題があります。ひとつは給与水準、二つ目はパフォーマンス、
三つ目は認識の違い、といったところでしょうか。人間は長
く置かれた環境に順応する生き物です。そのため大企業と中
小企業の比較をしだすと、現状では、簡単に解決できないこ
とばかりです。だからこそ、大手企業出身者を雇用するので
す。
給与水準の問題は、中小企業の経営者からみれば採用時にお
いては少々高いなと思っても気にしていない人が多いような
感じでした。ところが入社後、仕事をするにつれて、給与が
高すぎるのではないか、と疑念をもつようになります。中小
企業の中小企業たる所以は、まさにこのような短期志向です。
長い時間軸がなく、すぐに結論です。一気に経営者の不満が
爆発します。最悪は解雇でしょうか。
賃金は、パフォーマンスとの相関関係になりますが、中小企
業の経営者が長期的なスパンで自社の経営をどのように変え
ていくかという青写真をもっていなければ、大企業出身者は、
高額でパフォーマンスが低いと映るでしょう。採用する以前
に理解しておかなければなりませんが、お山の大将できた中
小企業の経営者にアドバイスをする人はいません。側に誰か
いるのですが、怒らせて仕事を失うよりは、よいしょ、で対
応していることがほとんどだったでしょうか。中小企業の経
営者には外部環境を学ぶ機会が少ないようです。
仕組みで動く大企業と人で動く中小企業の差ですが、こ
のことを体で理解していない中小企業の経営では、大手企業
の社員を採用すればするほどストレスになるでしょう。そも
そも現状認識が間違っているのです。
解決策があるとすれば、厳しいことを言ってくれるアドバイ
ザー(ブレイン)を側に置くことです。時間をかけて経営を
仕組化する理由を知ることが大前提です。そのうえで、孤独
ですが、自分の頭で考えて答えを出すしかありません。当然、
挑戦しても失敗はあるでしょう。相手が人間だからです。そ
れでも企業規模を拡大するための機能をどのように作るかを
体得するしかありません。
中小企業が大企業へと成長している企業では、創業経営者に、
諦め、があると私は思っています。自分の能力と普通の人間
の能力がいかにちがうか、ということを知るからです。だか
らこそ、創業経営者の能力以上のものを生み出すことが
できる組織を作るしかないという、自分を捨てるという諦め、
が、その原点ではないか、と私にはみえていました。
それ以外では、井深さんや盛田さんのように、みんなで何か
に挑戦することが好きな創業者の存在があるのかもわかりま
せん。
どちらにしても黒子である私は、企業の成長のための一部を
担えばよいだけで、長く企業にいるタイプではありませんか
ら、その成長を外からそっと眺めているのが好きなのです。