中小企業では退職金制度がない企業もたくさんあります
が、退職金制度がある会社では、退職金の扱いにも注意が必
要です。
従業員が刑事事件を起こすなどしたときに懲戒解雇するケー
スがみられますが、その場合、従業員に退職金を支給しない
ことが多いのではないでしょうか。
このようなケースでも後日、退職金の不支給が不当だとして
従業員から訴訟を起こされるケースもみられます。
結論からすると、裁判例では、刑事事件を起こして懲戒解雇
されたという事情があっても、退職金を不支給とすることま
では認めておらず、本来、支払われるべきであった退職金の
3割程度の金額の支払いを会社に命じることが多くなってる
ようです。
その理由は、退職金は在職中の賃金の後払いとして支給され
る側面をもっており、刑事犯罪をおこない懲戒解雇されたと
しても、その犯罪が在職中の功労をすべて抹消してしまうほ
どのものとはいえない場合、退職金を不支給とすることは適
当ではないという考え方に立っています。
このような事実を踏まえて考えれば、刑事事件を起こした従
業員を退職させる場合でも、犯罪の状況によっては退職金の
3割程度を支給することを前提にして、退職の合意を取り付
けるほうが、その後のトラブルを防止するために有効だとも
考えられます。
企業における事情は、さまざまですから確定的にこれだとい
う結論があるわけではありません。やはり、企業がおかれた
状況を判断しながら、結論を出していくのですが、中小企業
の場合は、この段階において判断をできる人材がいませんか
ら、労働専門弁護士へはやめに相談されることを、私は勧め
ています。