昨日書きましたように執行機関は「代表権」という強力な法
的権限のもとで、組織を統一的に機能させて活動します。
株主(会社の所有者)としては代表権(経営者)にかけてい
るのですが、他方、不安な面があります。
執行機関が、決定機関が決定した計画を誠実に進めてくれる
かどうかということです。
たとえば、「企業買収の案件」について、決定機関が支持し
ている理想の買収とはかけ離れた内容である買収を実行して
しまうようなことが考えられます。また、検討はするが、結
論を先送りするなど実行する意思がなく、買収予定が遅れて
企業業績に影響するこもこともあるでしょう。
そのような場合、誰かが株主に代わって、執行機関が決定し
たとおりに、しっかりと業務の執行をおこなっているのか、
その仕事ぶりを見守り、監督し、執行機関が決定した内容に
問題があるようなとき、すにやかに問題点を提起し、是正措
置を講じることを命ずることが必要になります。
このような機能のことを「監督機能」、その機能を担う
組織や人を「監督機関」と呼びます。
執行機関の「決定」と「監督」は、同じ機関が担当するのが
原則ですが、監督とは執行機関が決定したとおりに誠実に執
行しているかを観察して是正することが求められます。だが、
この点は、再三書いているように、これまでの日本企業では、
監督と執行を同じ取締役がおこなっていたことで、代表執行
役の監督がほとんどできていない状態だったのではないでし
ょうか。
無理もありません。
代表取締役に推薦される立場の取締役が代表執行役の監督な
どできるわけがありません。また、執行役も業務の執行に注
力することで取締役のポジションを維持することに執着する
ものです。
いわば、監督などと、どこ吹く風でしょうか。
監督する相手である「執行機関」は強力な権限と整然とした
ピラミッド型の組織を持っています。「監督する」と言って
も簡単ではありません。
監督機関が実効的に執行機関を監督できるためには、執行機
関を任命・解任できる「指名権」と、執行機関の報酬額を決
定する「報酬決定権」と、二つの権限をもつ必要がでてきま
す。
この二つの権限をどのように牽制していくかということが、
取締役会改革の本質ですが、やはり誰が、それをやるのか、
という本質に迫れば迫るほど、むずかしさがわかってくるの
かもわかりません。