株式会社における取締役の責任範囲は、多岐にわたっていま
すが、実際に取締役や執行役などはどのような責任を負わさ
れるのでしょうか。
取締役や執行役などの会社役員は重い責任を負いますが、社
会的責任や道義的責任といったものだけではありません。
当然ですが、その責任範囲の中で法的な責任を負うことにな
ります。
犯罪となるような行為であれば、刑事責任を追及されますが、
そうでない場合でも民事責任を負わされることがあります。
民事上の責任があるのかないのかは、立場や見解によって考
え方が異なり、裁判を通して決着することになります。
取締役や執行役が訴えられる民事裁判としては、「株主代表
訴訟」と「第三者責任訴訟」の二つを特に理解しておか
なければなりません。
前者は会社に対する責任であり、後者は第三者、会社外の債
権者に対する責任です。
取締役や執行役は会社に対して損害賠償責任を負うことがあ
り、公開会社(いわゆる上場企業)では、会社法847条に基
づき、この責任を株主により提起される株主代表訴訟で追及
されることになります。
株主代表訴訟は、取締役等の役員が会社に対して負っている
民事責任を株主が追及するための訴訟形態です。
一方、株主以外の会社外の人に対して負っている役員らの責
任は「第三者責任訴訟」で 追及されます。(会社法429条)
こちらは取締役等の役員個人としての 責任を債権者が追及す
るための訴訟ですが、中小企業でも注意が必要です。
第三者責任訴訟とは、取締役等の役員が会社債権者に対して
負っている民事上の責任を追及する訴訟です。
本来、債権者が取引したのは、取締役等の役員個人ではなく、
会社ですから、一次的には会社の責任と財産によってまかな
われるべきものです。
会社がもつべき責任をなんら保証もしていない取締役などの
役員個人に負わせる賠償責任を「第三者責任」といいます。
この責任が追及されるのは、会社が倒産した場合など、会社
からの回収が困難な場合が典型的なものですが、必ずしも会
社が倒産した場合にかぎりません。
第三者に対する責任は、取締役等の役員個人の単なる過失で
はなく、原則として「悪意または重過失」のある場合に、「
取締役等の役員の行為によって第三者の損害が生じた」とい
える範囲内で、損害賠償責任を負うことになります。
詳しいことは弁護士さんに聞いてもらうことにしまして、中
小企業の経営者はあまり理解されていませんが、第三者責任
訴訟において取締役が訴えられた事例で責任が生じることが
多いものには、次のような事例が見当たります。
・決済をすることの見込みがない取引をおこなう
・放漫でずさんな資金調達をおこなう
・返済の見込みがない手形借入や融通手形の振り出しを依頼
する
・経営悪化状況における無責任な仕入れを継続する
とかく中小企業では、コンプライアンス意識が低い経営者が
いますので、取引企業に限らず、社員においても注意をして
おく必要があります。
このような無節操な経営をおこなう経営者は無理筋な指示
など、私がみてきたところでは平気でおこなっていました。
多くの関係者に迷惑をかけて、そして夜逃げをしました。人
としての良心もなくなるようです。