2018年秋にスルガ銀行は、シェアハウスに絡む不正融資
の問題で報告書を公表しました。
ふたつの報告書が提出されましたが、このなかで監査役の責
任に関する判断が大きく違っていました。
最初、2 0 1 8年 9月 7日付第三者委員会による報告書では、
このシェアハウス問題の全体の事実関係を詳細に調査して、
スルガ銀行の組織や人事の体制を調べてありました。
役員の責任についても個別に言及し、改善策が提案されてい
ました。
2つ目は、2 0 1 8年 11月 14日付監査役責任調査委員会に
よる報告書では、具体的にスルガ銀行の幹部社員らの個別の
責任を追及できるかどうかを検討しており、そのなかで監査
役の責任は問えない、と結論づけてあります。
それぞれの役割や目的は違いますが、たった 3カ月で、真逆
の結論がでていたようです。
シェアハウスについては、私もある企業在籍中に、融資のお
願いため複数の銀行を訪問したことがあります。
私の時代でもいろいろな銀行がシェアハウス関連の融資に積
極的だったように記憶します。
私が訪問した銀行でも購入物件に対して融資をしたい旨、回
答がありました。結論からすれば、経営者がシェアハウス事
業へ参入しませんでしたから、融資の件は、終わりました。
私も、スルガ銀行のある支店を訪問しました。
2015年ごろからスルガ銀行はシェアハウスなどの不動産
物件のオーナーに対する融資に積極的になったといわれてい
ますが、私の記憶では、これ以前から投資用ワンルームマン
ションなどの融資につても積極的に対応していたように思い
ます。
東京や横浜は、メガバンクや横浜銀行などがひしめく競合地
域です。そこに目をつけたのが、若者の間ではやっていたシ
ェアハウス事業です。入居者には、各部屋があり、台所やト
イレは共同なので、その分、入居費用が安く上がること、さ
らに入居者同士でコミュニケーションがとれることも魅力だ
と、いわれていました。
不動産業者は、投資用ワンルームマンションと同じようにこ
れを投資物件として扱い、一般の会社員等に売り込もうとし
ました。
一般の会社員などにとっても、オ—ナーになってシェアハウ
スをうまく経営すれば、定期的にお金が入る、手軽な副業と
して購入する人がありました。
問題は投資資金です。
その資金をスルガ銀行が融資すれば問題は解決します。不動
産業者とスルガ銀行の考え方が一致することになります。
ただし、銀行には審査部がありますから、事業の採算性や融
資を受ける人の自己資金などを確認することが求められます。
よくあるのは自己資金が足りなかったり、事業の収益見通し
が甘ければ融資を受けることができないことです。
この問題を解決するために不動産業者は偽装工作をおこなう
ようになっていきます。
第三者委員会の調査によると、審査部の目をごまかすため、
虚偽の賃貸借契約書をつくったり、オーナーとなる人の銀行
の預金通帳を偽造して十分な資産があるかのように見せかけ
ていました。
当然ですが、無理な事業計画がたたって、シェアハウスの経
営は各地で行き詰まっていき、社会問題化しました。
社会を驚かせたのは、融資実績を上げるために、スルガ銀行
の行員が偽造に関与していたことでした。
通帳の偽造を見て見ぬ振りをしたり、暗に指示を出したりす
るケースもあったようです。
監査役がどのように対応したかということですが、第三者委
員会は、積極的に調査もせず問題があるとし、監査役責任調
査委員会の報告では、十分な調査だったとして、双方の見解
が割れました。
問題点は、監査役が問題を知ろうとするか、形式的な処理を
するかいう個人の資質においていることでしょうか。
私が知る監査役のイメージは、問題を知ろうとしないという
イメージです。
日本企業の統治は、昭和の時代など多くの企業で、同様な対
応をしていたのでなないでしょうか。
取締役会の改革は、このような問題にまでメスをいれてい
かなければなりません。
監査役責任調査委員会は、監査役会において何らかの調査や
取締役会への指摘を行うことになったとしても 、(一部省略)
損害の発生又は拡大を防止することができたということはで
きない、との見方を示しています。
監査役が問題を指摘しても被害の状況は変わらなかったとい
う見方をしており、監査役監査を否定してしまうかのような
結論になっています。
監査役だけに責任をとらせればいいというわけではありませ
んが、監査役責任調査委員会の報告書の見方のように知らな
かったで済まされるのなら、監査役自らが情報をとりにいく
ことをするようなことはないでしょう。
日本的ですが、何もしない方が得だ、と思ってしまうからで
す。
監査役の役目とはなにかと問われるような内容です。このよ
うな報告書がでてくることが、わが国の経営の実態ではない
でしょうか。
不正が続く理由のひつには、監査役という問題もあるのです。