契約社員のように1年間というような期間を定めて従業員を
雇用することを有期雇用といいます。
契約社員とは、有期雇用された従業員のことをいいます。
会社が契約社員を採用する目的のひとつとは、「雇用の調整
弁」機能を確保するということにあります。
雇用の調整弁機能とは、たとえば景気が悪くなり会社の業務
量が減った場合、契約社員との雇用契約を終了することによ
り、会社が人件費の削減でがきる余地を確保しておこうとす
る機能です。
このような前提ですから、契約社員については、勤務態度や
能力に間題があれば、雇用を終了することは比較的容易では
ないかと理解されているようですが、それほど簡単ではあり
ません。
企業側が契約社員を期間限定の臨時的な業務ではなく、企業
内の恒常的業務に就かせている場合、契約社員の雇用を期間
満了で終了することは、「雇止め法理」により制限されます。
その結果、契約社員の雇用を終了する場合の企業リスクは、
正社員を解雇する場合のリスクとそれほど変わらいケースが
増えてきています。
契約社員の雇止めとは、契約社員との雇用契約を契約期間満
了のタイミングで契約更新せずに終了することをいいます。
契約社員の雇止め法理とは、契約社員の雇止めが「客観的に
合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない
とき」は、契約社員が契約の更新を求めた場合、会社は更新
を強制されるというルールで、労働契約法19条で定められ
ています
「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認
められないとき」という内容は、「世間一般の目から見ても
雇止め(契約を終了)になるような相当な理由があるとき」
ということになるでしょう。
企業が契約社員を雇止めした後、契約社員から訴訟を提起さ
れ、雇止め法理によって企業側が敗訴する事件はかなり多く
なっているようです。
福岡地判福岡地裁
裁判区分 判決
事件番号 平30(ワ)1904号
事件名 雇用契約上の地位確認等請求事件(令和2年3月17日)
会社側は、原告に対する評価は、期待水準通りといったもの
であるばかりか、コミュニケーション能力に問題があること
が繰り返し指摘されており、原告のコミュニケーション不足
が原因でグループ会社の担当者からクレームが来たこともあ
ったことなどを指摘していました。
判決は、被告の主張する人件費の削減や業務効率の見直しの
必要性というおよそ一般的な理由では本件雇止めの合理性を
肯定するには不十分であると言わざるを得ない。また,原告
のコミュニケーション能力の問題については、前述した指摘
があることを踏まえても、雇用を継続することが困難である
ほどの重大なものとまでは認め難い。むしろ、原告を新卒採
用し、長期間にわたって雇用を継続しながら、その間、被告
が、原告に対して、その主張する様な問題点を指摘し,適切
な指導教育を行ったともいえないから、上記の問題を殊更に
重視することはできないのである。そして、他に、本件雇止
めを是認すべき客観的・合理的な理由は見出せない、とされ
ました。
その結果、会社は、約1,000万円弱の支払いと、雇用の継続
を命じられています。
このような多額の金銭の支払いが命じられる理由は、正社員
の解雇と同様、バックペイが認められるためです。
普通、会社は雇止めの後、雇止めした契約社員に賃金を支払
っていませんが、雇止めが裁判所の判断により無効とされる
結果、雇止めしていなかったのと同様な取り扱いになります。
当然、雇止めの時点にさかのぼって賃金を支払うことを命じ
られます。
このケースのように安易に契約社員を雇止めすると、裁判ト
ラブルに発展し、敗訴すれば、多額の金銭支払を命じられる
リスクがあることは、正社員の解雇と大きな差はないという
ことになります。
大手企業にしてこのような対応ですから、中小企業において
は、さらに乱暴な雇止めおこなっているのではないでしょう
か。もし、会社主導で強硬な雇止めをおこなえば、上記ケー
スよりも厳しい判決になるでしょう。