2021年、住友ゴムは加古川工場の防舷材の検査と南アフ
リカ現地子会社のタイヤ生産で不正があったことを公表しま
した。
「ダンロップ」といえば、クルマのタイヤやゴルフ用品など、
私にも馴染みがあるブランドです。
現在乗っている車のタイヤもダンロップです。その前の車も
継続してダンロップを使用していました。
防舷材というは、船舶の側面や岸壁の側面に取り付けられて
いるゴム製の緩衝材のことです。防舷材は受注生産で行われ、
PIANC (国際航路協会)のガイドラインに沿った圧縮試験に
よる性能検査が義務付けられています。
住友ゴムの調査報告書によれば、この試験に合格しなか
った製品の一部について検査データを改ざんして出荷すると
いう不正を30年以上続けていました。
性能の改善を続けていたようですが、完全な解決はできなか
ったようです。
報告書では、防舷材の圧縮検査の実態が、防舷材の圧縮試験
は抜き取り試験だけだった、と記されています。
例えば製造した10本の防舷材のうち1本の抜き取り検査で
合否の判定を行っていました。
その場合、検査した1本が不合格なら別の防舷材の検査をし
なければなりませんが、受注製造ですから、検査分に不良品
が出ると数が不足します。
追加で製造すれば、納期遅れとなり、製造原価が増え、発注
元から契約違反を訴えられたりすることも考慮されていたの
でしょうか、この事態を回避するため、データ改ざんをおこ
なうことになったようです。
受注分の本数しか製造していなければ、不合格品を合格させ
るしか手がありません。
社内で検査不正が起きていないかをチェックすることは簡単
なことです。生産計画を調査するだけで判明します。
問題は、なぜこのようなタイトな生産計画になるのかという
ことが、問題の核心でしょう。
住友ゴムの件だけではありません。昨年発覚したダイハツ
の不正にも、同様な背景があるのではないでしょうか。
結論から言えば、品質不正の典型ですが生産計画がきわめて
タイトなのです。そもそも無理な生産計画が課されている状
態から出発しています。
生産計画自体に問題があるのですが、経営数字を優先する企
業では、いつのころからか、計画=必達になっているようで
す。
現場に無理難題を押し付け、問題は現場で解決しておけ、と
いう極めて無責任な経営者がいることが、背景にあると想像
されます。
生産計画の数値の根拠を現場段階から積み上げていないので
す。いかにも見栄えがよい事業計画を、いとも簡単に作る経
営者を私はみてきました。
やはり内部監査において、必要な工数をとって企業内におけ
ビジネスプロセスのチェックを徹底することが求められてい
ます。
日本企業は、いつから張りぼて経営しかできなくなったので
しょうか。
ソニーのような企業で学んだ私には、不思議としかいいよう
がない現象が続きます。