中小企業で銀行取引をしていると、銀行によっては、他の銀
行との取引を縮小してくださいなど、と言ってくる結構厚か
ましい担当者がいたりします。
私は、どうしてなどと、確認してみることにしています。
これ以上の融資の拡大には、他行との取引を縮小していただ
くか、あるいは預金を解約して当行へ移管してください、と
言われたことがありました。
こんなときは、あまり相手にすることなく丁寧にお断りして
きました。
このような対応では、将来、円滑に銀行との取引ができなく
なるからです。
こうした銀行の担当者の言うことを真に受けて、他行との融
資を削減したりすれば、ひとつの銀行の融資のウェイトが大
きくなります。
その銀行が、将来希望どおりの融資をしてくれればよいので
すが、絶対などありませんから、融資を一つの銀行に集中さ
せることはリスク管理上も問題があります。
自社の事業の業績や財務内容が悪化し、その銀行が融資を出
さなくなったとき、他の銀行から融資を受けるという選択は
できにくくなります。
一行だけから融資を受けてきたのであれば、他の銀行へ新規
融資を申し込んでも、簡単に審査は通らないものです。銀行
は新規の会社への融資に慎重です。
融資を受ける銀行が一つしかないことは、企業にとってデメ
リットしかありません。複数の銀行、できる限り多くの銀行
から融資を受けるようにしておくことが必要です。
多くの銀行から融資を受けるメリットは、融資の選択肢を広
げられることです。
普段から複数の銀行で融資を受けて、返済実績をつけておけ
ば、一つの銀行で融資を断られたときでも、他の銀行に融資
をお願いすることが可能となります。
とにかく銀行は、実績がない新規の会社への融資にはなかな
かよい返事はもらえません。
もっとも、私が経験したように銀行から積極的に融資のアプ
ローチをしてくる場合は別です。
このような場合は、経営者と検討しながら対応していきます。
複数の銀行から融資の返済実績をつけておくことが、銀行取
引の基本です。
次に銀行間で競争させることができるというメリットがあり
ます。一つの銀行だけで融資を受けていると、銀行間の競争
がありません。複数の銀行から融資を受け、銀行間で競争さ
せることは、より良い条件で融資を引き出す前提条件になり
ます。
金利が低い融資、プロパー融資、無担保融資などの交渉をす
ることになります。
銀行の数は年々、減少しています。この30年間ほどで、銀
行、信用金庫、信用組合を含めた数で1988年の約109
0社から2018年の約600社弱とほぼ半減しています。
今後も少子高齢化が進むことで国内産業の基盤は弱体化して
いきます。これに対応するように銀行の統合は、さらに進む
と予測されます。
このようなことから複数の銀行との取引をしておくことは、
企業においてはリスク管理上、当たり前のことになって
きます。
銀行の担当者や支店長のなかには、仕事ができなかったり仕
事をやる気がないなどといった問題がある銀行員がいること
があります。
一般企業でも同じですが、そのような問題担当者にあたると、
融資が受けづらくなったりします。また、融資の審査がやた
ら厳しい支店長が着任することなども考えられます。
複数の銀行から融資を受けていれば、このようなリスクをあ
る程度避けることが可能となります。
大手企業と違い銀行取引には細心の注意を払いながら対応し
ていくことが中小企業には求められるでしょう。