中小企業の経営では、案外資金をもっておられる企業がある
ものです。
銀行借入もなく、比較的順調に経営をされています。
ただし、事業を拡大するという意欲は低いようです。それは、
それでひとつの経営スタイルだと思います。
経営上は、借入金があっても借入金以上のお金を持っていれ
ば、すぐに返済できるので問題はありません。
このことを「実質無借金経営」と言います。
中小企業が目指す経営は、この点にあると考えています。
理由は、資金をたくさん持っていれば、安定した資金繰りが
できます。また、月末に慌てて資金繰りを心配しなくてよい
でしょう。
さらに、何か新しい事業案件があったとき、すぐに投資でき
ます。もっとも、本業においても積極的な投資が可能となり
ます。
お金があることで解決できる問題は、すぐにお金で解決する
ということが簡単にできます。
問題もあります。資金が潤沢にあると経営が甘くなり、あっ
という間に資金を流失させてしまい事業を失敗する確率が高
くなります。
資金が潤沢にある場合に限らず、経営は、慎重さと大胆さと
いう相矛盾することが求められます。
そのうえで、借入金をもつことで、資金に余裕をもって事業
をおこなっている会社はたくさんあります。
もちろん、業種特性があります。建設業などでは、このよう
両建てで資金需要を満たしているところは結構あるのではな
いでしょうか。
本来であれば、会社は事業で利益を出し、税金を払って、お
金を残すやり方がベストです。ただし、中小企業では何年か
かるのかが問題です。
例えば1,000万円の利益を出しても、税金で約30%の300万
円は税金として納付することになります。残りは、700万で
す。2,000万円を貯めるには、3年間で毎年約700万円の利益
を出し続けなければなりません。
万が一、売掛金の滞留や取引先の倒産などあれば、仮に1,0
00万円の利益を出しても、資金として残ってない可能性が
あります。
利益を出してお金を残していくというのは、案外時間がか
かります。
また中小企業では、外部からの資金調達はなかなかむずか
しものがあります。
このケースでは、私が在籍していた企業ではありませんが、
株式公開を目指すという口実で増資をする企業があるよう
です。
このような企業の特徴は、売上高と比較すれば、資本金が
異常に大きくなっています。
しかし、実態は、増資をおこない運転資金に回しているこ
ともあるようです。
経営内容には注意を払う必要がありそうです。
建設業などでは、ある期間工事をしますから外注費や材料
費に充当するための運転資金がかなり必要になります。そ
の場合、金融機関との関係を大事にして、借入金を利用し、
事業を成長させながら、お金を残す戦略が必要になります。
経営とは、常に事業の成長を目指し、適正な資金をどのよ
うな形で確保していくかを競う競技でもあります。
お金をうまく運用できる経営者が、最終的に企業を成長、
発展させていきます。
これこそが、いわゆる経営能力なのでしょう。