中小企業から株式公開を目指すことは、急激な社内改革を伴
います。
これまで在籍していた社員は、不安でたまらなくなるでしょ
う。しかも、私のようなどこの馬の骨かわからない人間が、
部長として入社してくるからです。
私のような仕事をする人間は、多くの社員から歓迎されるこ
とを期待してはいけません。
理由は、従来から在籍している社員には、次のような心配や
不安があるからです。
・ 新たな仕事が増えるという心配
・今の自分の立場や仕事を失うという不安
・これまで積み上げてきたものがなくなるという不安
・株式上場で、改革すべき内容と目的の理解不足による不安
・失敗するのではないかという恐怖
このような不安や心配に関して、本来であれば経営者がしっ
かりと、経営者の言葉で社員へ説明しておくことが必要です。
ところが、創業経営者は、先を急ぎます。
自分だけ未来の企業へいっていますが、従業員は、なにも聞
かされておらず、ある日突然、私と出会うということがあり
ました。
このような経営をされている経営者は、だいたい失敗します。
どんなに優秀な管理職を集めても、管理職が仕事をするわけ
ではありません。
もちろん、株式上場に向けた専門的な分野は、上場ができる
ようにするために制度構築や組織改革などをおこないます。
問題は、従来から在籍している社員が、このような改革をお
こなうことで、相応な対応能力とスキルアップが求められる
ことです。
変わりたくない社員にとって、今までと馴染みがない仕事を
やらされたり、いやいやスキルアップしなければならいのは
苦痛でしかないでしょう。
経営者が真っ先にやっておくことは、私のような管理職が入
社してくる前から、なぜ、株式公開が必要で、なにをするの
か、そして株式公開した後の会社の将来像はこのようになる
、ということを何度も何度も経営者の言葉で話すことです。
そのような説明努力があってはじめて社員は、少しづつ理解
できるようになるものです。
それでも理解できない社員はいますが、徐々に経営者の話を
聞いて前を向いてやってみようとする社員がでてきます。
少数の社員でよいのです。
従来から在籍している社員の中に、このような人材をみつけ
出すことが重要です。
理由は、このような社員に、将来、企業の中核を担ってもら
うようにするためです。
企業というところは、現場を自ら理解できている社員が主体
となって事業を拡大していくのが一番よい対応方法だからで
す。
私のようなタイプの人間は、そのお手伝いをすることが、一
番でしょうか。
また、そのような基盤を作る仕事が、私は好きでした。