中小企業では、経営者が従業員への退職強要となるような言
動をしていることがしばしばあるようです。
私は、ストレートに辞めてくれと、創業経営者にいわれまし
たが、正当な理由などありませんでした。
経営者のまわりの管理職にいろいろなことを吹き込まれてい
ました。
私は、このような経営者に対する決断ははやく、すぐに自己
都合退職しました。解雇予告手当を支給すると言われました
が、解雇予告手当ももらいませんでした。
この創業経営者の言動をみてきましたが、勝負はついている
のです。
それから6年後、やはり倒産しました。
話がそれました。。。
本題ですが、問題がある社員に対し、退職に応じなかったら
解雇する、という発言はやっていけません。
経営者は短期な人が多く、問題社員に不満があり、辞めても
らいたい場合、これまでの経緯から感情的に「解雇する」と
言ってしまいがちです。
実際には、これまで書いてきたように会社からの解雇が裁判
で無効とされるケースは多くあります。
会社側が退職の合意に向けた説得の中で、「退職に応じなか
ったら解雇する」という発言をして、退職の合意を取り付け
たうえ、仮に会社側が解雇した場合でも、裁判では不当解
雇として解雇無効とされたりします。
中小企業で多い事例ですが、いったんは退職について合意を
した従業員が、退職の合意は会社側の強要によるもので無効、
だとして訴訟を起こせば、裁判トラブルに発展します。
昭和電線電纜事件(横浜地川崎支判平成 16年5月28日)は、
同僚に対する暴言などの問題があった従業員がいったん退職
に合意して退職した後に、元従業員が会社から退職強要があ
ったとして、復職を求めて裁判を起こした事例です。
この事件は、退職勧奨を行った際に、会社が「退職する意思
がなければ、会社は解雇の手続をすることになる」、「どち
らを選択するか決めてほしい」などと、会社が説明したこと
が問題だ、とされました。
裁判所は、本来解雇できるほどの理由がなく、解雇は法的に
は認められないのに、会社の説明によって、従業員は退職届
を出さなければ、解雇されると誤信して退職届を提出した、
と判断しました。
この前提により、裁判所は退職の合意を無効と判断し、会社
に対し、この元従業員を復職させ、かつ、退職によりこの従
業員が受領できなかった賃金約1,400万円を支払うことを命じ
ています。
退職勧奨をおこなう場合、「退職届を出さなかったら解雇す
る」という発言をすることは、横領などの明確な解雇事由が
ある場合でない限り、このような対応はできません。
解雇に該当する退職事由でもない限り、事実に基づかない説
明をしたということで、後に、退職した元従業員から、退職
の合意は無効だとして訴えられれば、企業側が敗訴する理由
になります。
同様の事例は他にもあり、企業側は、解雇事由に該当しない
ケースでは、「退職しないから解雇します」ということ自体、
厳禁です。