上場企業の場合は、未上場企業の経営以上には注意を払って
おく必要がありますが、なかでも創業経営者が経営している
場合です。
そもそも取締役には、会社と株主に対して忠実に委任契約を
遂行する義務を負っています。
これを「忠実義務」と言います。
個人としての利益と会社の利益が衝突する場合は当然、会社
の利益を優先しなければなりません。
法令では「法令・定款・総会決議を遵守し、会社のために忠
実にその職務を遂行しなければならない」とされています。
その内容は次のようなものです。
・競合避止義務
・利益相反取引の回避
・株主の権利行使に関する利益供与の禁止
・剰余金の過剰配当
・他の取締役に対する金銭の貸付
・故意・過失によって第三者に損害を与えること
なかでも「利益相反取引」には注意が必要です。
創業経営者は、上場していてもその多くは大株主ですが、未
上場時と違い多くの株主がいます。
そこで未上場企業だった時代と同じようなことをやろうとし
たりします。
私が在籍していたある企業では、次の取引をやめてもらいま
した。
創業経営者が個人所有してたマンションを社宅として使いた
いというのです。
まさに利益相反取引となるケースです。
もちろん、第三者である外部の不動産会社などを通して市場
価格、いわゆる相場で貸すような場合はあると思いますが、
そのケースでも本来やめておくべきですが、直接会社が、取
締役(この場合、創業経営者)が所有する不動産物件を借り
入れるような場合は、あきらかに利益相反取引の問題が発生
します。
このケースは、創業経営者が、個人として不動産会社へ依頼
して一般的な賃貸物件として取り扱ってもらいました。
会社との契約はしませんでした。
場所がよくありませんでしたから、なかなか貸すのに苦労さ
ていましたが、あくまで経営者個人の問題なのです。
他にも、次のケースでは利益相反取引となります。
・取締役と会社間で行われる売買契約
・会社から取締役へ行われる贈与
・取締役からの利息がついた会社への金銭貸付
・会社から取締役へ行われる債務免除
・取締役が受取人となる会社からの約束手形の振り出し
上場企業の場合、創業経営者であっても、法人(会社)と個
人を明確にわけて対応しなければなりません。
すくなくとも未上場時代と違うという認識が必要です。
十分理解されているのですが、個人の資産を増やしたいばか
りに安直なことをやりだすのも創業経営者の特徴でしょうか。
このようなことがないように、総務担当者は、目を光らせて
おくことになるのです。