企業規模が拡大すると規模の不経済が発生します。
企業はもともと成長していくことが宿命づけられています。
ライバルがなく、独自性を有する製品などがあり、市場の
中で安定した地位が築けており、さらに無借金経営で毎年
一定のキャッシュフローが得られるような企業は、必ずし
も短期的な成長が必要ないのかもわかりません。
このような企業は極てまれであり、企業は、常に成長性を
前提に毎年売上や利益の拡大を目指していきます。
企業が、売上や利益の拡大ができない場合、そこになんら
かの問題があります。
毎年、順調に成長してきた企業が、あるときを境に、急激
に問題を引き起こすことがあります。
不思議と問題は、連続して発生します。
いわゆる「モグラたたき」状態です。
経営者は、問題が発生する都度「注意」を喚起しますが、
それでも問題は継続します。
このような状況にある企業は、成長性の中に含まれている
「管理可能範囲」の限界の問題にぶつかっていると、私は
認識しています。
簡単に言えば、経営者が、自ら管理することができる範囲
を超えていることを示しています。
経営者は、継続して経営をおこなうことで経営規模が拡大
しているにもかかわらず、まだ自らだけの判断で経営をお
こなうことができる管理可能範囲なのだ、と思い込んでし
まう傾向があります。
経営者の中でも自らの「管理可能範囲」の限界認識がある
場合、必ず管理機能を強化します。
経営管理する人員の増強やERPシステムなど、管理機能
の強化のための投資をためらいません。
理由は、企業規模の拡大に伴って失う損失と管理をするこ
とで損失を防ぐコストを比較し、経営規模の拡大期におけ
る損失を最小限にするためです。
このようなターニングポイントが、企業には、それぞれの
事業運営の連続性の中に存在します。
このことがわかる経営者は、自らの判断の限界を悟り、判
断を組織機能に委ねていきます。
俗にいう分業制へ転換していき、それぞれの管理単位へ経
営者自らが行使していた権限を委譲します。
企業規模に応じた管理可能範囲を拡大(権限を委譲)させ
て、経営規模の拡大を目指すことになります。
この転換が上手くできない場合、最悪倒産、次に企業売却、
さらに大幅な規模縮小といったことに直面します。
私は、すべての局面をみてきましたが、経営管理の重要性
は、音も立てづ忍び寄ってきます。
余程、周到な準備をしておかないと、瞬く間に、経営の
台骨を揺るがしかねません。
企業が拡大傾向にあるときに「問題」が発生することには、
よくみると相応の意味があります。
そのサインを的確に捉えて、事業運営方法を「経営者個人
の判断」から「権限移譲による組織の判断」へ転換できる
かどうか、新たな経営管理機能を上手く機能させることが
できるどうか、がカギになります。