デジタル化の流れの中で苦戦し、撤退していた家電メーカー
の姿が、今では語り草になってしまいました。
ブランドは残っているが、中国企業へ売却さるなど、2000年
代の家電メーカーは苦難の連続でした。
現在、ソニーは好業績をたたき出していますが、その事業内
容は1990年当時とは大幅に変わりました。
振り返れば、1990 年代のはじめに一介のエンジニア(ソニー
子会社社員)が「デジタル」化の危機について、話をしてく
れました。
その内容は、アナログ時代と違い、LSI、DSP による機能の
超集積化とプログラムによる制御によって、外見は同じよう
でも中身はまったく新しい製品になる、というものでした。
また、デジタル時代には、アナログ時代のような企業間格差
がなくなり、大手家電メーカーの存在意義が希薄になるとい
うような内容でした。
私は、話を聞きながら、いっている意味がわからずイメージ
をつかむことができませんでしたが、そんな折り、放送局向
けデジタルVTR(当時、1台5,000 万円ほど)とアナログ
ハイビジョンテレビを見て、エンジニアたちが話していた内
容を、少し理解できるようになってきました。
今にして思えば、現場のエンジニアたちの優れた予測には驚
くばかりです。
予測は、毎日の仕事だけでなく、趣味やコンピュータの活用
などといった個人的な勉強によっておこなわれていたと確信
できます。
エンジニアたちは、あらゆる機会を捉えて、とにかく勉強し
ます。
おそらく問題の本質(将来像を含めて)は、現場にいる一介
のエンジニアたちのほうが、経営陣よりもはるかにわかって
います。
その実態に、どこまで迫れるかが経営管理の優劣を左右する
のではないでしょうか。
現場の社員の意見などと、馬鹿にする経営者ほど墓穴を掘る
ことになるでしょう。