社会や企業のなかには、部門間や個人間の格差を解消された
くないという立場を望む人たちがおり、その人たちは格差を
固定したがる人たちでしょう。
逆に、弱い立場にいる人たちは発言力も弱く、弱い人たちを
救い上げていくような意見はとおりにくいものです。
企業内で不正が起こる原因には、このようなことも遠因とし
てあるのではないでしょうか。
企業は、優秀な人材を集めるための競争原理が働きます。企
業の人気や不人気は人材獲得に的確に現れてきます。
採用する側は、応募してきた人が優秀かどうかはそう簡単に
わかりません。
高学歴で有名大学の学生ほど人気企業に入りやすいのは現実
でしょう。高偏差値大学の出身者は、与えられた課題を正確
にこなしてきたという、まことに狭い範囲ですが、実績があ
ります。
それは、うまく仕事をこなす能力があるのではないか、とい
う期待を企業に持たせます。
いわゆる学歴フィルターというやつでしょう。
やっかいなのは、この学歴フィルターは入社後も、企業内で
根強く生きており、学歴の高い人や有名大学出身者は人気部
署や出世コースの部署に配属されることも多いのではないで
しょうか。
その後も比較的順調に昇給、昇格していき、企業においてこ
れらと違う人たちとの格差は広がる傾向にあるでしょう。
学歴フィルターがあった方がよいかどうかという判断だけで
言えば、高学歴、有名大学出身者からすれば、あることが前
提で生きてきているでしょうから、その点でいえば、社会は
硬直性を有していると言えます。
本来、企業内でも社会の近似値に近い人の構成にしたほうが
よいのですが、採用する大手企業には、そもそも硬直した体
制を望む人たちが多く、苦労して手に入れた既得権を手放し
たいとはなかなか考えないものです。
一般的に、一流大学の学生は学歴社会に肯定的でしょう。
私のようなそうではない人間は、実力や人物を見てほしいと
訴えますが。。。
およそ大企業には、入社時から出世コースに乗る人とそうで
ない人がいます。また、社内的にステータスの高い部署とそ
うでない部署があり、社員個人にも部署にも格差があります。
社内の構造格差が悪いとは言いませんが、問題なのは、構造
格差のなかで、いわゆるエリート層には既得権を守るために、
格差を固定化するという弊害があることです。
もちろん私のように非エリートな人間は、このような構造格
差に反対です。しかし、立場が弱い人たちは、なかなか自分
たちの不満や改善などを求めて、会社を動かすことがむずか
しいものです。
その点、労働組合が経営側に対するカウンターパートナーと
なって、このような構造格差を是正しなければならないので
すが、こちらも企業内組合という固定化された構造にどっぷ
りとつかって自らの立場を守っているようにみえます。
私が在籍していたある企業では、問題がある管理職に関する
ことは、労使協議会で申し入れて改善させていました。
本来、労働組合が機能していれば、企業内における不正に関
して、ある程度の範囲で把握することは可能でしょう。
この点でも、現在、わが国の大手企業内における構造の固定
化は、多くの問題が発生しているように思えます。
まだ、このような格差構造が続くでしょうから、不正も同様
に続ていくと、考えておいたほうがよいでしょう。
中小企業にとって、このような大手企業の固定化された環境
は、中小企業の経営という観点からすればチャンスでしょう
し、まさに大手企業と違った流動的な組織構造をつくればよ
いだけです。
ところが、本来、中小企業こそが、固定化されない構造をつ
くるべきなのですが、むしろ創業経営者は、大手企業以上に
固定化された経営構造をつくりたがります。
自ら企業の伸びしろを放棄しているようなものでしょうか。
これから起業したり、創業間もない経営者は、この点をしっ
か認識しておくことが、将来、企業を成長させていくための
原理のひとつになるのではないでしょうか。