残業代の未払いについては、現在でも多くの事例が報告され
ています。
会社は従業員の就業時間を正しく管理して、残業に対しては
残業代を支払う義務があります。残業代の未払いがあるよう
では、従業員の信頼を得ることができません。
そもそも大手企業と中小企業では、残業に関する認識が大き
く違っています。
大手企業の場合は、残業は変動費として業務の繁閑に対応す
るために積極的に活用しています。
たとえば、メーカーが新商品の販売が好調な場合、その生産
数量をあげるため時間外労働(残業や休日労働)をおこなう
ことで対応しています。
間違っても繁忙期のためだけに正社員を増員して、総額人件
費を増やすことなどありません。
このような場合、先ず正社員の残業で対応し、さらに不足す
る労働時間に関しては契約社員、あるいはパート社員等の期
間雇用をおこないます。
ところが、中小企業の場合、このような計画性がないばかり
か、行き当たりばったりで残業に対応しているケースも多い
ものです。
もっとも問題なのは、経営者の意識の中に、残業をする人間
は仕事ができない、といった先入観があることです。
そのため、残業代を支払いたくないという意識からサービス
残業させていたりします。
私は、少ないですが、このような場面をみてきました。
中小企業では、さらに経営者が確信的にサービス残業をさせ
ていることさえありました。残業代という言葉さへ言えない
環境を作っていたりします。
当然、労働基準監督署の臨検を受け、多額の未払い残業
代を支払うことになります。
また、管理職に関しても注意が必要です。
労働基準法は41条で 「監督若しくは管理の地位にある者」
については、時間外割増賃金、休日割増賃金の対象としない
ことを定めています。
「監督若しくは管理の地位にある者」に該当するかどうかは、
最終的には裁判所が判断します。
企業の対応で多く発生していますが、社内で「管理職」と扱
われていても、裁判所で「管理監督者」にあたると判断され
るとは限らないという点です。
いわゆる名ばかり管理職が存在したりするからです。
裁判所は、企業内で自身が担当する部門について経営者と一
体的な立場で管理を担当する従業員に限り、管理監督者と認
めていますので、多くの判例において、企業で管理職と扱っ
ていても法律上の管理監督者には該当しないとして、企業が
管理職に対する残業代の支払いを命じるケースが多数ありま
す。
管理職について残業代の支払いをしていない会社は、本当に
その管理職が法律上の「管理監督者」に該当するのかを十分
検討しておく必要があります。
中小企業ほど、このような点で法律を拡大解釈、いわば自分
に都合よく解釈しています。
このようなことで労働問題を起こせば、企業の成長や拡大ど
ころではありません。
ひとつ間違えば、企業が倒産するケースさへあります。
中小企業において、将来の事業を拡大成長させようと考えて
いる経営者であれば、稼ぐ経営とともに、適正な賃金の支払
いは基本的な経営事項となるでしょう。