横領事件などで企業が受ける損害は、実際に横領された金額
といった表面的な数字だけではありません。例えば経理担当
者が経費を水増しして、2,000万円を着服(横領)したとす
れば、まず着服された2,000万円が損害額となります。
次に、2,000万円の経費が架空計上されていたのであれば、本
来であれば、企業には同額の利益が出ていたことになります。
つまり納税額を間違っていたことになります。
そのため会社は、2,000万円について修正申告のうえ、延滞税
を含めた金額を改めて納税する必要があります。
改めて申告をするので、税理士費用なども発生します。経営者
からすれば、2,000万円の回収もできていないのに納税する必
要があるのか、と考えるでしょう。しかも延滞税までも。
会社にとっては相当のキヤツシュが出ていくことになります。
この場合の損害額の算定は、本人が否定したことも見越して、
証拠に基づいたものでなければなりません。
数字が合わないから損害だ、といっても、争われたときに裁判
では勝てません。
当然ですが、企業の資産が流出していること、および流出が社
員本人の行為によるものであることを裏付ける証拠が必要です。
損害額の確定は、私もやりましたが簡単な作業ではありません。
徹底的に損害額を確定しようとすれば、いつまでも確定できな
いことになりかねません。
私の場合、証拠資料を警察に提出しましたが、最終的に裏付け
がとれた金額は、500万円でした。
経営者が民事賠償を請求しても回収がむずかしいと判断してい
ましたから、この時点では、確定申告は通常通りおこないまし
たが、このような事件が発生した場合、税理士などとよく相談
して確定申告をおこなうことが必要となります。