人間が、どういうものさしをもつかという点においては、そ
の人間が生きてきた環境による影響が大きい。自分の両親、
学校の先生、学生時代の友人、企業の先輩や上司、企業文化、
自分が学んだ書物などの影響を受けているだろう。そのよう
な中で企業における企業文化の影響は、人がその企業の中で
成功するほど強く影響する。
特に創業期からの企業文化が残っている企業では、創業者の
影響は絶大である。その文化が社会的に評価されているよう
な場合は、さらにその影響は大きくなる。
どのような状況にあったとしても人は、多くの影響を受けな
がら自分の価値観を作り上げる動物である。作り上げていっ
た価値観が良いものであれば、その人がおこなう事業活動も
同様によいものとなる。それは、そのことに納得している、
あるいはそれを受け入れている人間から見ると高い目標や志
へと昇華していくものだ。そのような経営者がいる企業では、
着実によい企業文化を育みながら、確実に成長していくと考
えている。
「評価」の視点も大事だ。人も企業もどちらも社会や人から
評価を受ける対象である。そして客観的な評価は、人間であ
れば自分を成長させるための重要な情報のひとつになる。
良い評価は伸ばしていけばよいし、悪い評価は自分を見直す
きっかけになる。企業も同じである。特に株式を公開する企
業は、より公正な視点で、いわゆる上場基準に基づく評価が
必要になる。常に内部情報を一定のルールで開示して社会の
評価を受けるため、客観的な評価に耐えうる事業活動が厳
しく要求される。また、その基準を満たす事業運営ができる
ことが上場企業として活動する前提条件となっている。
一方、人や企業のどちらにおいても主観的な評価が必要だ。
人の場合は、自分がおこなっているすべて活動について自分
自身が一番よく理解できているわけだから、内面の評価をし
ておくことが重要だ。
客観的な評価との乖離があった場合でも最終的には自分自身
の評価で自分を決定しなければならない。
自分の人生における評価は、どのような客観的な評価をもら
おうとも、最終的には自分の意思で評価されるものだ。それ
こそが人生だからだ。
一人一人の人生のすべてを評価できるのは自分をおいてほか
に誰もいない。厳しく孤独だが自分で評価する以外にない。
会社の評価は、客観的な評価がすべてであろうが、事業活動
の中における経営者と社員の関係は主観的な結びつきによる。
いわばお互いの思いのようなものだ。このような主観的でよ
い結びつきが強くできている企業ほど成長していく。また、
企業を離れてもこのような主観的結びつきは永遠に続くもの
だ。
そこが人間の人間たる所以である。しかも人生にとって大き
な意味をもつようになる。身内を可愛がるといったことや身
内に甘いといったことではない。会社における事業活動の高
みを目指していっしょに行動していくなかで養われていく相
互の高い思いであろう。それはその人と別れようが人生をリ
ードしていくような力強い思いへと昇華されるようなものだ。
このような思いは、事業活動に如実に反映される。良い結果
がでてくれば、良い思いであるだろうし、悪い結果になれば
悪い思いといえるだろう。そのすべては、経営者、社員にか
かわらず事業活動に明確に反映される。