経営者に限らないが、物事を進めていく上で、「頭でするこ
とと心ですること」があると思う。特に一般的な常識に基づ
かない行動をおこなう場合などは、心で思うことからスター
トする。
頭でどんなに考えても答えはでない。
理由は、誰もおこなっていない、あるいはおこなった人はい
るが極めて少数者の場合、そのような情報を入手することは
非常に困難だからだ。また、他人に聞いたところで的確なア
ドバイスなどもらえるはずがない。
本当の意味でひらめき以外のなにものでもない。

人と共有できないために常に不安感がよぎる。しかしそれで
も行動していくだけの情念のようなものだ。
日本人は、このようないささか常軌を逸した行動や思考につ
いて理解することがむずかしい民族だと思う。

私見だが、危機感がない社会状況や同一民族、あるいは戦後
我国でおこなわれてきた読めてわかる教育の弊害ともいえそ
だ。物事を深く考えて、心の情念のような思いに基づく思索
などが著しく弱いと思う。

このような情念ベースをもとにコミュニケーションがとれる
人は少ない。ベンチャー経営者に限らず個人においても世の
中を変革することができる想像力をもつ起業家に対し、論理
的な反論をおこない、このタイプの人間の心のパワーを萎え
させる人間は多いものだ。

特に小学生など柔軟な思考ができるときに、このような対応
をしている我国の教育はまさに心のパワーを委縮させるもの
でしかないだろう。
中村天風氏が言う、「心の作用」など、もっと目が向けられ
てよい。人間がもつ能力は、記述できるものだけでないこと
がわかるだろう。人間には、本来、自覚できる能力が備わっ
ている。

心ですることは、感情の影響が大きく、極めて個人的な情の
世界のヒラメキや想像力が重要になる。
頭ですることは、論理的で、多くの人が共有可能な理の世界
であり、分析や論理的指向が重要だ。
成功という結果にいたるプロセスは心の問題の方が大きいと
思う。また、 心ですることには不安がつきまとうが、共有し
づらいがゆえの不安でもある。

「赤信号みんなで渡れば怖くない」という共有可能な安易な
答えに依存しがちところで成功はないだろう、と想像できる。
ベンチャーキャピタリストは、自己保身のために、共有しや
すい頭の可能性に偏重し、心ですることに伴う不安との格闘
を避けているようだ。世の中を変革しようとする想像力豊か
な起業家に対し、論理的な確認ばかりをおこなうか、経営者
がうまく作る理屈だけで判断しているようだった。

心のパワーを活かす発言や行動をすることは、体得していな
い人にはむずかしい。
この意味では、たたき上げの創業経営者のほうが理解できて
いた。