岡山に林原という企業があった。上場してはいなかったが、
地方企業としては大きな企業だった。倒産当時、約800
億円の売上規模となっており、甘味料などに用いられる糖
質トレハロースを製造販売するなどファミリー企業として
は日本でも有数の企業だ。
そんななか粉飾決算により会社更生法を申請し、現在では
、長瀬産業が経営に参加し、ナガセヴィータ株式会社
として事業が継続され業績は堅調だ。
林原倒産事件について、当時の社長の林原氏が経営体制に
ついて、次のように語ったところが重要だと、私は考えて
いる。
『経営には必ず中立で第三者的な立場の人が必要である。
例えば、弁護士や公認会計士などの専門家を社外役員とし
て意見をいつも聞ける体制にする。当然、その社外役員は
会社の真の味方で、企業の存続を強く願っている人でなけ
ればならない。
次に企業経営には落度があってはならない。最近は特に法
令やコンプライアンスの遵守が強く叫ばれている。確かに
に粉飾は会社法違反行為である。マスコミは徹底的に粉飾
を非難した。
今回の倒産は、この落度の隙を突かれたと言ってもよい。
最後に、ヴィクトル・ユーゴ―の名作「レ・ミゼラブル」
の主人公ジャン・バルジャンは飢えからパン一切れを盗ん
で一生追われる身になった。たとえパン一切れでも隙を見
せてはならない。「ああ無情」命取りになる』
元経営者の立場から経営者のあるべき姿勢について本音を
確信的に語っておられる。
株式公開しようが、ファミリー企業であろうが、社会的ポ
ジションが明確な企業を目指すのであれば、林原氏が語っ
た内容は、原理原則だ。
経営者が決して忘れてはならない教訓だろう。